女正月

風土記の世界」   三浦 佑之著

 「風土記」は元来和銅六年、律令政府によって正史「日本書」の地理志を編むための資料として各国に出された命令の解(報告文書)らしい。後世の写本だがほぼ残るものは、「常陸国風土記」と「出雲国風土記」を始めとする五か国で、収録された内容もさまざまであるという。筆者は「日本書記」や「古事記」との内容の違いを問題にしながら、そこに中央政権と地方との関係を明らかにしてみせる。

 例えば「常陸風土記」には正史にはなかった「倭武(ヤマトタケル天皇」への熱い思いが語られており、中央で「天皇家の歴史が確定する以前のもうひとつの歴史や系譜が垣間見える」とする。「出雲風土記」についてはさらに踏み込んで「古事記」の出雲神話風土記や書紀に見られないのは「排除したほうが律令国家の神話を叙述するにはふさわしいというきわめて政治的な作為がはたらいた結果」だと断言している。出雲についてはヤマト政権に対峙する確たる力があったことは疑いのないことのようだ。そしてまた、ヤマト政権がそれを恐れていたことも事実であろう。それにしても出雲の神々の活躍を大きく扱った「古事記」というのはどういう存在であろうか。この本では「古事記」については書かれてないのでそのあたりの本を読んでみたいと思う。

 「出雲風土記」は以前「八雲立つ風土記の丘」のミュージアムショップで購入したもので、読んだことがある。国引き神話などが記憶に残っているがその時感じた素朴な疑問。各地の動植物の記載があるのだが「熊・狐・猪・兎・猿」などが出てくるのに「狸」がない。人里近い動物だと思うのに不思議である。

 

 Yより「私もマルティアさんの腹巻き帽子を編んだよ」と帽子をかぶった孫の写真つきのメールがきた。もうふたつ目に挑戦中らしい。親子で同じようなことに興味をもっていたようで面白かった。この寒さで指が痛く、こちらはなかなか取り掛かれない。

 

 

 

 

     本を買いかるき昂ぶり女正月

 

 

 

 

風土記の世界 (岩波新書)

風土記の世界 (岩波新書)