明易し

「火山で読み解く古事記の謎」 蒲池 明弘著
 時々コメントをくださるこはるさんがブログで紹介されていた本である。書名のおもしろさに惹かれて読み始めた。古事記というこの国の創世物語に火山のイメージを重ねた話である。例えばスサノオイザナミは火山のメタファーではないかとかアマテラスの天岩屋隠れは大噴火の火山灰の闇ではなかったかとか等々、古事記の詳細な記述の検討を通して火山関係の痕跡探しが展開される。筆者によれば、古代の日本列島に住む人々におそらく大きな精神的な傷を残したにちがいないのは7300年前、九州本島南端の沖合で起きた巨大噴火(鬼界カルデラ)。この超巨大噴火は海抜43kmを持つ噴煙の柱を吹き上げ、火山灰は東北地方にまで降り積もったという。縄文人にとってはとりわけ厳しい生きるための戦いをもたらしたこの大災害が、口承として記録されてきたというのは十分考えられることだ。しかし、ありうりかもしれないというだけで空想の域は出ない。が、面白かった。われわれの島が改めていかに火山列島であるかということもよくわかった。 




     老いたればいよよますます明易し




火山で読み解く古事記の謎 (文春新書)

火山で読み解く古事記の謎 (文春新書)