伽羅蕗

「ぼくの東京全集」 小沢信男
 Tから回してもらった一冊。太くてまだ半分しか読んでいない。内容の面白さとちくま文庫の読み易い活字で、じっくりと読んでいる。わけても最初の章「焼跡の街」。あの3・10の大空襲の二日後、焼け跡を見に行った話。焼死体を掘り起こしたり、丸太のように積んでトラックで運んだりという凄惨な現実の一方、山手線は走り映画館は「多少の空席をのこして、定員に近く人が入っていた」という摩訶不思議な話。さらにパンパンと呼ばれた人たち(基地の街だったうちの街にもそう指さされた人がいました)の募集が国家の肝いりで始まったという、これも摩訶不思議な酷い話等々。太平楽な今の世の中で忘れてはいけないことが幾つも。
 最終章には東京に材を得た俳句も収録されているが、これがいい。こういう軽妙洒脱な句だ出来たらなあと思う。

庭にはびこった蕗を採取して調理します。ざっそうに混じってはびこっている蕗・韮・三葉。





     伽羅蕗や母の手書きの調理メモ