東北大震災より6年。もう6年と言うべきか、まだ6年というべきか。未だ仮設に暮らさざるを得ない人、先の見えない原発事故の後始末。それらを思い忘れないことぐらいしか私達は出来ない。
この6年で読んだ震災関係の本を振り返ってみた。そのうちの一冊。
いとうせいこう著「想像ラジオ」。 かなり前に読んだので細部は忘れたが、津波で亡くなった人がDJとして発信し続ける話。話し続ける当人自身が死んでしまったのかそうでないのかわからないという不思議な話でその設定があまりにも突然な死を暗示している。おそらくこういう思いは残された人びとはもちろん、あちら側に行った人にもあったに違いない。近頃読んだ宇田川啓介著「震災後の不思議な話 三陸の怪談」でも死んだはずの自分の体を探す人の話を始め、不思議な話がたくさん集められている。こういう現代の怪談話は、「もう一度逢いたい」という残された人びとの深く強い思いが語らせたことかもしれないが、実話と言われても肯うしかない。あの震災はそれほどの出来事だったのだから。
掲載句として今年も高野ムツオさんの俳句を選んだ。当事者の句として他の震災句にないインパクトがあるから。もう一つの短歌は去年4月10日の朝日新聞歌壇で選ばれた塩竈市の佐藤龍二さんの作品。海溝という深みに呑まれていった日常がありありと感じられるので、ここに引用させていただいた。
車にも仰臥という死春の月 高野 ムツオ
海溝に落ちてゆくのは中華鍋家族の写真赤い自転車
佐藤 龍二
- 作者: いとうせいこう
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- 作者: 宇田川敬介
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