寒雀

「ハツカネズミと人間」 スタインベック
 ジョージとレニー、二人は農場から農場を渡り歩く貧しい労働者だ。大男と小男、知恵のあるものとないもの。ちぐはぐな二人だが深い友情で結ばれている。ジョージは二人の夢をレニーに語って聞かせる。
「一軒の小さな家と二エーカーの土地を持ち、一頭のめウシと何頭かのブタを飼う。そしてー」「そして、土地のくれるいちばんいいものを食って、暮らす」
レニーはこの夢物語を聞くのが大好き。繰り返し繰り返しジョージに語ってくれとせがむ。夢の農場に咲くムラサキウマゴヤシを摘んでウサギの世話をするのが彼の一番の夢なのだ。
 そして、手首のない爺さんキャンディも仲間入りして、夢の実現に近づいたと思ったのだが・・・愚かな人間のつまらないちょっかいが取り返しのつかない悲劇を引き起こしてしまう。

 戯曲仕立てにしたこの中編はスタインベック出世作だという。先日読んだ荒川さんの本で知り、Tの本棚で見つけて読んだ。久しぶりに心に残った切なく悲しい話だった。

 このところ最低気温が氷点下を記す寒さ。大雪に難儀をしておられる地方に比べればたいしたことはないのだが、それでも閉口。





     枝枝に花のごとくに寒雀





ハツカネズミと人間 (新潮文庫)

ハツカネズミと人間 (新潮文庫)