「どんぐり」 寺田 寅彦著
団栗の写真を撮ったので団栗の句を詠みたいと、いろいろ考えた。いくつか拾って独楽にして大事にしまいこんで虫を沸かしたという体験は、自分にも子供たちにもある。夫は団栗を蒔くと言って敷地の一角にクヌギを生やしてしまった。今や大人の背丈ほどはあり毛虫はつくし当方としてはいただけない。何年か前、北海道大学の構内で拾った普通の二倍ほどもある団栗。虫も出ずに今も机の上にあるのだがこれは一体何の団栗だろう。
ところで、寺田寅彦の「どんぐり」は悲しい話だ。今日も思いついて読みなおしてみたのだが、やっぱり目頭が熱くなった。
「大きいどんぐり、ちいちゃいどんぐり、みいんな利口などんぐりちゃん」と出たらめの唱歌のようなものを歌って飛び飛びしながらまた拾い始める。余はその罪のない横顔をじっと見入って、亡妻のあらゆる短所と長所、どんぐりのすきな事も折り鶴のじょうずな事も、なにも遺伝してさしつかえないが、始めと終わりの悲惨であった母の運命だけは、この子に繰り返させたくないものだと、しみじみそう思ったのである。
無邪気な妻の忘れ形見を見ながらの寅彦の述懐である。
秋は孫たちの生まれ月。すっかり大きくなってしまったが、幼かった頃を思い出して。
団栗や兄といってもまだ三つ
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