秋黴雨

 庭の一本の柿の木が倒れた。先日蝉といっしょの写真をあげた木である。大往生といっていい、百年近い経年木である。何となくこのところ葉が萎れているように思っていた。たまたま見ていた娘婿の話では、雨の中、静かにふわりと倒れていったらしい。この夏の雨の多さが弱らせたのかもしれない。雨水が流れ貯まるところに植わっていた。

 不思議な木で昔からずっと二メートル足らずの小さな木で、実も渋柿と甘柿が混在していた。甘いものは果肉に胡麻斑が出て早くから食べられたが、胡麻斑のないものは干し柿にするしかなかった。うちでは「油壺」と呼んでいたが、正しい呼び名かわからない。今年もいくつか実をつけていたのに、もうまぼろしの味となってしまった。手頃な高さなので子どもが小さい頃はよくぶらさがっていたことなども思い出す。

 いささか感傷的と思われるだろうが、見慣れた景色が変わったのが寂しい。

 

 

 

 

     わが齢超ゆる木の果つ秋黴雨(あきついり)

 

 

 

 

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