甚平

「バッタを倒しにアフリカへ」 前野 ウルド 浩太郎著

 Tがすごく面白かったというので、回してもらう。その評価に違わず、面白く一気に読んだ。

 前野さんは昆虫学者である。博士号を取ったものの、好きな昆虫の研究をしながらどう生活を成り立たせていくか悩む。悩んだ末に好きなバッタの研究と社会貢献・生活手段の獲得といくつもの夢を抱えてアフリカ、モーリタニアに移住。モーリタニアとはスーパーで買う蛸の産地ぐらいしか知識がなかったが、あのすざましいバッタの害に苦労している国のひとつらしい。その国のバッタ研究所に席を置きながら研究をしようとするのだが、あいにく任期の二年間の間にバッタの大発生が起きない。軍資金は尽きようとするし、先は見えないし、さすがの彼も意気消沈するのだが・・・。起死回生の一部始終については興味のある方は読んでいただきたい。逆境でも夢を叶えんと奮闘する努力も、めげない使命感も、自分の能力への自信も、彼の人柄なのだろうがいくつかの出会いと幸運も読む者を惹きつける。

まだまだ研究途中のようだが、立派な研究成果が出て殺虫剤に頼らない「バッタ被害」対策が叶ったらと願わずにはいられない。

 

 掲載句。それこそバッタの脛のような父の脛を見ていて出来た一句。「お前たちが齧ったからなあ」と言っていたっけ。明日は父の祥月命日。

 

 

 

 

     甚平や男の脛の細きこと

 

 

 

 

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

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