葛湯

「鉄道旅へ行ってきます」 酒井純子・関川夏央原武史
 前半が鼎談形式のレポートで後半は各自のひとり旅レポートである。どちらかというと後半の方が旅の報告としては面白かったが、前半にも興味を覚えた章はあり。一番は地元の名古屋鉄道の乗車記録。「偉大な田舎」「異文化都市」などと散々揶揄されっぱなしだったが、名古屋本線西枇杷島駅近くの大三角地帯とか布袋駅の古駅舎の話とか見慣れたものだけになんとなく嬉しかった。ことに布袋駅は若かりし頃五年間も乗り降りした駅だけに解体される前にもう一度行っておけば良かったの感しきり。北陸本線の「駅そば」食べ乗りもいい。これは情報が古い(2010年刊)のだが富山駅の立ち食いそば屋はまだあるのかしらん。新幹線が開通して駅の景観も変わってしまったにちがいない。岐阜駅だって小便くさいようなあの古い駅舎の時の方がずっと旅情があったもの。
 五能線リゾートしらかみ」には何年か前念願がかなって乗車した。秋田で弁当やビールを抱え乗車。家族三人個室で盛り上がろうとしたら東能代で余人を迎えることに。(個室は定員四人)シャイな感じの青年でお互いに気を遣ってぼそぼそと弁当を食べた記憶がある。旅も時が経つとどうでもいいことが思い出になるものだ。



    西行庵まではあきらめ葛湯吹く


鉄道旅へ行ってきます

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