立冬

 暦の上では早くも冬。さて、今日の掲載句だがいまの中学校教科書に入っているらしい。かって中学校の国語教師をしていた友人のYから聞いた。Yはこの句が入れられた意図がわからないと言っていた。跳び箱が子供に身近な題材だというわけで入れられたにちがいない。跳び箱は体育館など室内での運動で「冬が来る」という外気の変化と結びつかない。そんな意見だったように覚えている。確かにYのように真面目にこの句を鑑賞させようとする教師には困った句かもしれない。教科書に入れるなら情景の描ける句がいいと思う。それはさておき、私はこの句が好きである。名句だとも思っている。「跳び箱の突き手一瞬」までのスピード感、「いっしゅん」という促音が跳躍する身体を想像させる。そして畳み掛けるように「冬が来る」と言い切った下五。これは連体形なのだろうが口語の言い切り(終止形)に繋がる。[hu][yu][ru]とウ段の多用も風を感じると言ったら言いすぎか。スピード感と厳しさと風、冷たい冬の大気を連想させる。いよいよ厳しい冬の始まりへの覚悟である。




     跳び箱の突き手一瞬冬が来る  友岡 子郷

 



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