「漱石の思い出」 夏目 鏡子述・松岡 譲筆録
少し前に友人のYから薦められたが、図書館になかったので忘れていた。テレビのドラマで「漱石の妻」なるものをやっていて思い出した次第。すぐにネットで購入。さすがYのお薦めだけあり無類に面白い。よく漱石の妻は悪妻だったなどと聞くがそんなことをいう人は女性の人権を軽んじている人に違いない。偏屈で神経やみの夫、頻繁な訪問者、七人の子沢山(一人は夭折)お金のやり繰り、おおらかで剛胆な鏡子さんなればこそ添い遂げられので、私なんぞはとてもとても及びもつかない。漱石のダークな面を晒したことも批判されたようだがそれが漱石の作品の価値をおとしめることにはならない。もう一回漱石をじっくりと読んでみたいと思わせるにしても。
さて、この中の場面場面に出てくる俳句がとてもいい。例えば総理大臣主催の宴を断らんとする一句。
時鳥厠半ばに出かねたり
などは俳味の極致。例の猫の墓標に書き付けた一句。
この下に稲妻起こる宵あらん
は猫を思う気持ちがずばりと出た名句。ほかにもいいなあと思うのはいくつか。確かあったはずと、以前買った「漱石俳句集」も出してきた。
晩学や一直線に秋の蜂
- 作者: 夏目鏡子,松岡譲
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1994/07/01
- メディア: 文庫
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