稲の花

 「里の時間」芥川 仁・阿部 直美著
 先日テレビを見ていたら、都会から引っ越して田舎暮らしを始めた人が、「便利は忙しすぎる」と言っていた。この本は経済的効率化に毒されているような時代だからこそ、ゆったりと時間の流れる里暮らしをと、レポートしたものである。そこには「米作り」を中心に季節に寄り添った暮らしがある。自然の恵みをいかした食事や産土神を中心にした祭りの楽しみ、共同体での助け合いなど里暮らしのプラス面ばかりが報告される。しかし、多くの地域が申し合わせたように高齢化と過疎の里である。これは今に消えていかんとする美しい日本の原風景をレポートしているのか。私は、読んでいるうちに何だか悲しくなってきた。渡辺京二さんの本に明治の開国直後の日本を描いた「逝きし世の面影」がある。あの本の中の日本がもうどこにも残っていないように、経済的効率主義は里の時間も飲み込んでゆくのではないか、そんな危惧を抱きながら読んだ。


 週明けにミニ旅行の予定だった。あいにくの台風襲来予報。キャンセルするか大いに悩んでいるところ。


      まほろばや風受けて鳴る稲の花



里の時間 (岩波新書)

里の時間 (岩波新書)