夏終る

 法師蝉も鳴き夜はすでに虫の大合唱。賑やかな盆三日も終る。生きた人間の世話に忙しくて、いつもご先祖様は放りっぱなし。さぞかし微苦笑と推察。
 法師蝉が鳴きだすとなんとなく急き立てられる気持ちになるが、考えたら宿題が残っているわけでなし、どうということはないのだ。あるとすれば人生の宿題。この休みの間にもH殿の大学時代の先輩が余命一年との話。「うかうかするな。もういいかい、もういいかい。」と法師蝉は声をかけているのかもしれぬ。



         捕らへたる小魚放ち夏終る