サングラス

 「どくとるマンボウ航海記」 北 杜夫著
 半世紀も前の海外旅行記である。なんで今更というところだが、未読であった。新聞の書評欄で島田雅彦が「著者もふき出すとぼけた見聞録」と書いていたので、俄然読みたくなった。すぐにキンドルで買って正解。三分の二を越された鬱々たる気分が吹っ飛んだ。それにしても半世紀も前のこと(正確には58年前)だからまるでタイムカプセルを覗くようなところもある。オランダには空襲の空き地が残っていたり、ベルギーの動物園の入園料300円を高いと感じたりという時代である。しかし、寄港するどこの国でも今よりずっと貧しいのに、テロの不安などは毫もない。昨今の世界はどこでどう狂ってしまったのかと、またぞろ現実に戻って腹がたってきた。


     サングラスとれば船長幼顔



どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)

どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)