日焼け

「父の生きる」伊藤 比呂美著
 読み終えて涙が出てきた。汗といっしょにジャブジャブと顔を洗いながら、何で泣けるんだろうと考えていた。親を看取た後の比呂美さんの悔いに自分を重ねているところもあった。比呂美さんのお父さんに父の晩年や姉の老いを重ねて、「老いの悲しさ」に泣けたところもあった。
 「お父ちゃんは寂しかったのよ。ほんとはあんたに仕事をやめてほしかったのよ。いまの私にはよくわかる。」そう言って電話のたびに愚痴った姉の言葉も思い出した。歳をとるのは本当に大変。もう一歩も二歩もそっちの方に行きかけている身としては、明るくスマートに「じゃね」とおさらばしたいのだが、そうは問屋が卸さないかもしれぬ。



     日焼子の胸ふくらめば少女かな

父の生きる

父の生きる