「日本近代随筆選 2 大地の声」
先のシリーズの二冊目である。明治から戦後までの名だたる名文家の随筆四十編が選ばれている。一冊目より選集の意図が明確で、心惹かれる作品も多かった。春から冬へと季節の移り変わりに題材を得た作品は二十編どれもが散文詩のような味わいで一語一句が味わい深い。
しかし、それにも増して心に残ったのは関東大震災にまつわる随筆を集めた第二章、中でも内田百輭「長春香」ドイツ語の弟子であった女性が震災で亡くなったのを悼む文。あの借金大王、「阿房列車」の作者と思えぬしみじみとした追悼文である。追悼会で闇鍋をこしらえ、興に乗って位牌まで鍋に入れてしまうくだりが、彼らしいがかえって悲しい。「長春香」とは仏前にたく香のことだそうだ。
ブログもちょうど五ヶ月目。やみくもに毎日更新を続けてきたが、このへんで身の丈にあった書き方に変えようと思う。
地下鉄にかすかな峠ありて夏至 正木 ゆう子
- 作者: 千葉俊二,長谷川郁夫,宗像和重
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2016/05/18
- メディア: 文庫
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