梅雨

 「ニッポン周遊記」 池内 紀著
 池内さんの紀行文が好きだ。読書ノートを繰るとこの五年ほどの間に7冊も読んでいる。中には、刺激されて旅程に組み込んだ所もある。多分宮城県登米などは、はるばる出かけた一例だと思う。巧みな文章の紹介で今回の30の町もどこも訪れたくなる所ばかり。あとがきで筆者は「地方の疲弊ぶりがよくいわれるが・・・豊穣な自然に恵まれ・・・由緒ある歴史をもち、文化遺産、生活資産がどっさりある。甦りの手だてがないはずはない。」と書き、町々の魅力や努力を紹介している。近頃は東京が元気なら地方の衰退はかまわないというような考えの人もいると聞くが、文化の厚みは地方があってこそ。ネットで検索するのは邪道と思いながらも、地図を傍らに、ネットで検索しつつ、じっくりと楽しんだ一冊だった。


     河よりも低き家並や梅雨の月