木下闇

 以前、古今集の橘の花の歌に触れて、「あの甘い香りをどんな方法で袖に移すのかしらん」と思ったことがあったが、疑問が解けた。この前まで読んでいた本に「万葉集大伴家持の歌に述べてあるように、橘の花を袖に入れてその匂いを楽しんだという風習・・・」とあった。早速大伴家持・橘で検索。あったあった。万葉集巻18の411番
橘の長歌の一節である。
  ・・・ほととぎす 鳴く五月には 初花を 枝に手折りて 娘子(おとめ)らに つとにも遣りみ 白たへの 袖にも 扱入れ(こきれ) かぐわしみ・・・
とある。袖に「こきる」とは袖に「しごきいれる」ということで、納得。優美な風習である。
 さてもさても疑問を温めておくのは大事。思わず氷解した時の嬉しさよ。 


     木下闇灯りをもらす光堂