六月

 「美女という災難」❜08年版ベスト・エッセイ集
 長年、日本エッセイスト・クラブ編の年間ベスト・エッセイ集を愛読してきた。このところ見かけないと思ったら❜11年でこの企画が終了していた。これは読み落としていた少し前の作品集である。
 エッセイが好きである。理由を考えてみた。まず手軽に読める。これが長編小説などだと「読むぞ」という気合がいる。書き手の素顔に触れる楽しさがある。エッセイにフィクションを書く人はいないからみんな本当にあった話である。しみじみと人生の滋味を感じる話が多い。そして、手練の文章を読んだ後の爽快感。総じてうまい作品は終わり方が見事。落語の「落ち」に似た完結感と言おうか。真似をしたいと思う書き方。屁理屈を考えればこんなものだが、まあ息抜きの一杯のコーヒーのようなもの。
 さて、この作品集の感想。心に残った何編かは回想の話が多い。佐藤優さんの外務省研修生の頃の話、中島誠之助さんの駆け出しの古物商の頃の話、松沢哲郎さんの読書の思い出、主婦の戦後の貧しかった頃の思い出などなど。筆者の懐古の気持ちが昔を懐かしむ年齢のこちらの心情に共鳴しやすいのかもしれぬ。
 調べてみると、最終巻はまだ読んでいないようだ。借りてこようと、メモした。

 梅雨前にと夫は玉ねぎの収穫。こちらは台所磨き。久しぶりの換気扇フィルター清掃に苦労。



     六月を綺麗な風の吹くことよ   正岡 子規
 


美女という災難―’08年版ベスト・エッセイ集

美女という災難―’08年版ベスト・エッセイ集