夏白鷺

 
伊那谷の旅 一日目
 伊那谷に行こうと思い立つ。著名な文人墨客を輩出している飯田に興味があった。先ごろ、安西水丸さんの「ちいさな城下町」で飯田市について読んだせいもある。俳人井月(せいげつ)の漂泊の地でもある。
 さて一日目。まずは伊那谷雄大な自然に圧倒された。青嶺の後ろに聳える中央アルプス南アルプス。残雪の山々が青空に映えて美しい。駒ヶ根高原の駒が池のほとりには井月の句碑。
        雁がねに忘れぬ空や越の浦
井月は越の人である。江戸末期から明治初期、「伊那谷に逗留しつつ漂泊、数奇な生涯を終えた」と岩波文庫の井月句集の帯にある。近年とみに評価の高まった俳人だ。主な滞在地は今の伊那市のようで墓も伊那市にあるらしい。残念ながら今回はそこまで足を延ばせなかった。伊那谷の自然を思いつつまた井月を読み直してみたい。
 この後光前寺、元善光寺を廻る。



     天龍や夏白鷺の夕ながめ   井上 井月