四月馬鹿

 著名な免疫学者として華々しい表舞台を歩んできた筆者が突然に脳梗塞に倒れたのは六十七歳の時。一夜にして重い障害を持つ身となる。それは、歩くことも、声をだすことも、飲んだり食べたりすることも困難な重度の障害である。しかし、筆者は自死も考えた絶望の淵から厳しいリハビリに耐えて新たな自分を誕生させる。「寡黙なる巨人」である。不器用な動作、尻もちをついたらどんなにあがいても起き上がれないという無様な姿、失った声。筆者はそれを「鈍重な巨人」に擬える。そして左手でパソコンを打って執筆活動を続け、「診療報酬改定」の非を抗議し続ける。まさに偉大な巨人である。
 「生きる」とはかくも厳しく尊いものか。日々漫然と暮らしいる身にとっては目の覚める一冊であった。


     負けの込む贔屓チームや四月馬鹿


寡黙なる巨人

寡黙なる巨人