法起寺の塔
 奈良の旅 その二
 折角斑鳩まで来て、法隆寺を素通りするのはもったいないと二日目の予定を変更する。法隆寺、二十年ぶりの再訪である。中門が修理中。早朝で人影も少なく驚くほど静か。雀や椋鳥が国宝の甍に喧しい。差し込む朝日のせいか、前回見にくかった金堂の釈迦三尊像や模写壁画もよくわかる。大宝蔵院や百済観音堂をまわり、夢殿・中宮寺へ。桜はまだ二分ながら広い境内を十分に堪能した。
 斑鳩の里より南進。二上山麓の當麻寺へ。中将姫の伝説と當麻曼荼羅で名高い大寺である。東塔・西塔と天平の塔を二つ持つ。最古の梵鐘、最古の石灯籠と奈良には最古とつくものが多い。


     女身仏に春剥落のつづきをり   細見綾子