「断片的なものの社会学」を読んだ。2016年紀伊國屋じんぶん大賞受賞作という。新聞広告で上野千鶴子さんが大層褒めていたのも、興味を覚えた。筆者は個人の生活史を聞き取り、社会学を研究している方。聞き取ったものの中で分析も解釈もできない、だが印象的な断片を集めて上梓したとのこと。高齢な路上のギター引き。同棲しながら風俗で稼ぐ女性。ネットで異性装を配信するゲイ。マイノリティといわれる人々を取り上げながら、世界にひとつしかないない路上の小石のように無意味な語りは美しいと書く。断片的な聞き取りの間に挟まった筆者の断片的な見解や独白は、人の孤独について、あるいは人との繋がりについていくつかの示唆をも与えてくれる。
正直言って、粘着性の言い回しが理解しがたいところもあったが、筆者のピュアな問題意識を随所に感じることはできた。
小鳥屋に灯のつきてより春の宵
- 作者: 岸政彦
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2015/05/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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