三月


お礼の花籠
 学生時代からの旧い友人と会う。働き盛りの頃には一時途絶えていたが、歳を重ねてから再会した。今も年に数えるほどしか会わないが、不思議なことに長い断絶を感じない。話しだすと、直ぐに学生時代にタイムスリップする。今日も昔の卒業式の話になり、岐阜大学が卒業式に君が代を歌わないことにした話にもなった。さらに新聞の投書欄で取り上げられていた岐阜大学付属中学の愛唱歌「われら愛す」にも話は及んだ。「われら愛す」は昭和28年に募集された新国民歌の一等当選作という。清新な希望に満ちた平和新国家の一員である喜びにあふれた歌だ。昭和28年。私達は小学2年生。まだまだ貧しかったが、今より未来は明るかったとしみじみと二人で納得し合った。
 三月の始まり。感傷にとらわれず、明るく余生を歩きだしたい。

     いきいきと三月生まる雲の奥  飯田龍太