余寒

 姉に電話をした。出ない。出ないのは部屋に閉じこもっているのではなく、誰かと一緒かもしれないと、良いように考える。姉には軽度の認知症がある。
 先日こんなデータを知った。うちの市の認知症の人は「65歳以上の7分の1、軽度も含めると4分の1だ」という。驚くべき数字だ。周りの仲間を見渡しても、それほどの割合とはとうてい信じられない。予防にはあれが良い、これが良いという。姉の例をみても必ずしも効くとは思えない。姉は好奇心は強かったし、高齢まで運動もよくした。積極的に活動している間にもアミロイドβは溜り続けていたことになる。ただ発症のきっかけは義兄の死に違いない。ひとり暮らしになって急激に意欲がなくなり鬱のような症状を呈した。本人が拒否したのだが、早く受診していれば状況は変わっていたかもしれない。 
 今日のニュースで「日本の人口が減少に転じた」とあった。ますます比率が大きくなる高齢者が若い人に重い負担を強いることになる。長生きが肩身の狭いことにならなければよいが。丈夫な歯を折って嬉々として姨捨山に行ったおりんばあさんを思う。

     庭先に石につまずく余寒かな