読書

冬晴れ

「ヒマ道楽」 坪内 稔典著 俳人の坪内稔典さんのエッセイ集である。1944年生まれとあるからひとつ年上。三十年来朝食に餡パンを食し、カバを愛し、力の抜き方を教えてくださる。いくつかの俳句や詩の紹介の内、思わず笑えるひとつ。全編ではないのが残念…

寒波来る

「未来への記憶 上・下」 河合 隼雄著 この前読んだ本のユング心理学に触れた部分が気になり、Tの本棚から河合さんの本を出してきた。副題で「自伝の試み」とあり河合さんからの聞き書きをまとめたもの。これならまず読めそうと踏んでのことである。予想に違…

着ぶくれ

「ネコはどうしてわがままか」 日高 敏隆著 気分が乗らないというか何と言うか面白い本に出会わない。図書館から借りてきたものもつまみ読みをして放り出したまま。「何か面白い本ないですかぁ」とTやH殿の本棚を渉猟する。その結果、これは全く気楽に読めそ…

大寒

「生き上手 死に上手」 遠藤 周作著 題名に惹かれて読んだが面白くなかった。随分死ぬことを恐れていろいろ書いておられるが、筆者六十代後半、いまならまだまだ若いといってもよい年齢である。文中、ある集まりでふとしたことから「死ぬのはこわいか、こわ…

女正月

「風土記の世界」 三浦 佑之著 「風土記」は元来和銅六年、律令政府によって正史「日本書」の地理志を編むための資料として各国に出された命令の解(報告文書)らしい。後世の写本だがほぼ残るものは、「常陸国風土記」と「出雲国風土記」を始めとする五か国…

冬銀河

「静かな水」 正木ゆう子著 正木ゆう子さんの第三句集である。平成六年から平成十四年までの296句を収録とある。今は第五句集が話題になっているようだから少し古い。正直に言えば本屋で句集を購入したというのは数えるほどしかない。結社にいたころは買…

冬籠

「すごいトシヨリBOOK」 池内 紀著 池内さんの文章が好きで随分いろいろ読んだが、これは肌いろが違う。あとがきを読むとどうやらテープ起こしをしたものらしい。だが、池内さんらしいところがないわけではない。例えばいろいろ記録をする、自分なりのルール…

筆初

「あと千回の晩飯」 山田風太郎著 食べられる夕飯はあと千回(だいたい三年)、「もう一食たりとも意に染まぬ晩飯は食わない」と思い立っての書き始めだったが、糖尿病を発病。病院食となる。なかなか思うようにはいかぬなかで、老残を数えたり死に方を考え…

冬至

「老いるについて」 浜田 晋著 また、浜田先生の本を借りてきた。 この本で浜田さんは、「呆け」と「痴呆(認知症)」は違うとかなり強調しておられる。ひどい物忘れ、好奇心がなくなる、整理ができない、鍵をかけ忘れる、うっかりミスが増える、こういうの…

年詰まる

「ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた」 高橋 源一郎著 こどもの言葉でこどもの気持ちで語るお話風社会批評。 ある年の夏休み、語り手のランちゃんたち小学生四人は夏休みのものづくりのひとつとして「くに」をつくろうと考えた。こんな突拍…

冬帽子

「あの頃」 武田百合子著 信じられないことだが新刊なのである。没後25年、花さんもお歳を召されてきて、自分の元気なうちにと未収録のものをまとめられたらしい。同一人物だから当たり前だが「富士日記」の百合子さんを彷彿とさせる。帯に「たぐいまれな…

十二月

「薬石としての本たち」 南木 佳士著 以前、この人のエッセイ集『猫の領分』を読んで友人に「なかなかよかった」というようなことを言ったら「暗いから」と軽く否定されたことがあった。確かに語り口が暗い。「臆病な思考回路」とあるとおり自省的で、ああで…

冬ぬくし

「心をたがやす」 浜田 晋著 正直に言ってこの方は存じあげなかった。たまたま図書館で手にした本である。初稿は二十年も前のものらしい。もうリタイアされたが町居の精神科医であったらしい。若月賞を受賞されている。真面目でヒューマンな方である。バブル…

木枯

「語りかける花」 志村 ふくみ著 書評や自著で源一郎さんや若松英輔さんさんが高い評価をしておられたので手にした一冊。染織家で人間国宝、その方面の高名は周知のとおり。以前「桜の幹が桜色をだす」というような文章を読んだこともある。 それにしても色…

時雨

「日本の詩歌」 大岡 信著 これはフランスで行われた日本文学の詩歌に関する講義の原文である。対象が外国人であることと話し言葉の記録であることから、多分読みやすくわかり易いだろうとTから借りた。 中身は菅原道真の漢詩から始まり、古今集から始まる勅…

ちゃんちゃんこ

「日本の『アジール』を訪ねて」 筒井 功著 「アジール」という言葉を知ったのは網野さんの本であったと思うが、むろんそれは中世の話であった。この本はそのアジールが二十世紀の半ごろまで存在し続けていたという事実をレポートしたものである。 「アジー…

朴落葉

「『司馬遼太郎』で学ぶ日本史」 磯田 道史著 今売れっ子の歴史学者の著書である。表紙に「大反響 12万部突破」とある。新聞の読書欄でもベストセラー本として紹介されていたので、予約を待って借りた。読後感を一言で言えば「ガッカリ」。磯田さんの本は…

小春日

「北斗の人」 司馬 遼太郎著 家の古本屋に出す予定のダンボール箱の中から拾い出してくる。久しぶりの司馬さんの小説でかなり面白かった。「北斗の人」とは北辰一刀流をあみだした幕末の実在の人物、千葉周作のことである。剣術を合理的精神で追求し「近代的…

散紅葉(ちりもみぢ)

「うたかたの日々」 諏訪 哲史著 朝日新聞の名古屋版に長く続いた「スワ氏文集」をまとめたものである。これは第二弾で2012年以降のもの。他に別の新聞などに掲載されたエッセイも含んでいる。 さて、「スワ氏文集」といえば一番愉快なのはコテコテ名古…

冬の駅

「知らなかったぼくらの戦争」 アーサー・ビナード著 戦後七十年の一昨年、英語にはない「戦後」という意味を考えてみたいとビナードさんが始めたインタビュー。自身のラジオ番組で紹介したものを書籍化した本である。短いインタビューだが様々な戦争体験が…

黄葉期

「応仁の乱」 呉座勇一著 ベストセラー本であり、司馬さんや内藤湖南先生が「応仁の乱」は歴史の転換点だと言われるし、これは読むしかないと借りてきたのだが、いやはや複雑で三分の一を残してお手上げ状態である。跡目相続の争いやら権力闘争、利害が複雑…

隙間風

「歴史の中の邂逅 1 空海〜豊臣秀吉」 司馬 遼太郎著 400ページもある随分と厚い本である。司馬さんの亡くなった後に、おそらく未収録の歴史の関するエッセイを集成したもので、一巻目は古代史から豊織時代までの内容である。司馬さんの語り口が懐かしく…

鯛焼

「幕末日本探訪記」 ロバート・フォーチュン著 著者は英国人のプラントハンターである。植物採集のために幕末の日本を訪問。だいたいプラントハンターなる仕事が珍しい。こういう役割の人を国家事業として未知の国に派遣するというのもいかにも大英帝国らし…

赤蜻蛉

「残花亭日暦」 田辺 聖子著 書評で高橋源一郎さんが今、オバアチャンたちが面白いというようなことを言っておられたのを読んで、いつも元気なお聖さんから元気を頂こうと読み始める。ところがこれはご主人のカモカのおっちゃんが亡くなられる前後の日記で笑…

団栗

「どんぐり」 寺田 寅彦著 団栗の写真を撮ったので団栗の句を詠みたいと、いろいろ考えた。いくつか拾って独楽にして大事にしまいこんで虫を沸かしたという体験は、自分にも子供たちにもある。夫は団栗を蒔くと言って敷地の一角にクヌギを生やしてしまった。…

運動会

「女の民俗誌」 宮本 常一著 この本を称して、解説で谷川健一氏が「かえりみられることなく消えていった無名の女たちの生活誌」だと書いている。まさにそのとおりで、貧しくもたくましく生き抜いてきたわれらの先達の話である。彼女らの苦しい生き方に比べた…

村芝居

「新釈 遠野物語」 井上ひさし著 その前読んだ「東北ルネッサンス」の中で赤坂さんがこの本に触れて、柳田さんの「遠野物語」とくらべて「語りということを非常に意識されていた」などと書いておられたので、てっきり東北弁の語り本と勘違いしていた。まあ東…

金木犀

「五重塔」 幸田露伴著 いやはや凄い話だった。こういう文体を「求心的文体」というらしいのだが、畳み掛けるような調子に息もつかず一気に読んだ。ことに完成なった塔を揺さぶる大嵐のこれでもかこれでもかという描写、吹きすさぶ暴風雨が目に見え耳に聞こ…

「にんげん住所録」 高峰 秀子著 二十四節気の「寒露」。露がしみじみと冷たく感じられる頃である。今日は晴れて気温も上がるとの予報だが、このところの朝晩の冷え込みには、一段と秋の深まりを感じさせる。 図書館で何気なく借りてきた一冊。彼女とは世代…

「東北ルネサンス」 赤坂 憲雄著 まだ東北にこだわっている。Tの書棚にあった赤坂さんの対談集。東北にこだわった七つの対話記録、どの対話も熱い東北讃歌である。かの地においては三内丸山遺跡の発掘がもたらした影響は多きかったようだ。中央以前に優れた…