読書

寒雀

「ハツカネズミと人間」 スタインベック著 ジョージとレニー、二人は農場から農場を渡り歩く貧しい労働者だ。大男と小男、知恵のあるものとないもの。ちぐはぐな二人だが深い友情で結ばれている。ジョージは二人の夢をレニーに語って聞かせる。 「一軒の小さ…

雪嶺

「忘れられる過去」 荒川 洋治著 わかりやすい言葉でじゅんじゅんと語りかけるように諭すように書く人。まねをしたいようなスタイル。思わぬことを調べたり比較したり。例えば「注解」や「索引」が本ごとでどう違うか、「検印」が何時頃まであったか、相づち…

冬籠

「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないのか」 矢部 宏治著 新年から重たい本を選んでしまった。新聞の書評欄で見てたまたま検索したら図書館にあった。今まで無知であったのだが、この本を読んでいると日本人としての誇りがガラガラと崩れていく。…

冬の山

「俳句と暮らす」 小川 軽舟著 著者の俳句と著名俳人の俳句をテーマべつに取り上げて、思いを綴った俳句エッセイともいうべきもの。引用されている著名俳人の俳句は、よく知られた名句が多い。中でも圧倒的な存在感があるのは妻を詠んだ草田男や森澄雄の句、…

歌留多(かるた)会

二十四節気の小寒。寒の入りである。これからひと月、立春を迎えるまでが我慢のしどころ。日常が戻ったら戻ったで何か当てがあるわけではない身は、寒いと暇を持て余し気味。 「日本人は何を捨ててきたのか」年末から読んでいて一応読了。だいたい対談本とい…

数え日

「非常時のことば」 高橋 源一郎著 数え日になってものんびりと陽だまりで本をよんでいるなどというのは、去年までには考えもしなかったこと。若い頃は休みになってからあれもこれもと奮闘。疲れてよく夫と衝突をしたものだ。 さて、この本の「非常時」とは…

クリスマス

「俳句世がたり」 小沢 信男著 出たてほやほやの一冊。Tが買ってきて先に回してくれる。みすず書房の小雑誌に月々掲載されたものの七年分らしい。話題は古今東西縦横無尽、老大人らしい軽妙な語り口。懐かしい昔話もあるが大半は相も変わらず奢る権力への怒…

年詰まる

「悪党芭蕉」 嵐山光三郎著 悪党とはちょっと言いすぎてはないかと思うが、従来の枯淡な俳聖のイメージは大きく崩れた。芭蕉が門人としたのは海千山千の一筋縄ではきかぬ面々ばかり、中には罪を負って獄舎に入った者も後に人殺しをして切腹した者も豪商もお…

ちゃんちゃんこ

「昭和二十年夏 子どもたちが見た日本」 梯由美子著 このところこの人の本が話題で気になっていたのだが、たまたま図書館の棚に著作を見つけた。昭和二十年当時十歳前後だった著名人十人に話を聞いたものである。学童疎開やそこでのいじめ、飢えに苦しんだこ…

漱石忌

キンドルに青空文庫の「漱石全集」を入れている。昨日、出かけるのにキンドルを持参、たまたま未読の「道草」を読み始めた。これが結構面白くて帰宅してからも読み続け、今日読了。何がそんなに面白かったのか、多分漱石の赤裸々な自伝というところであろう…

「死んだらどうなるの?」 玄宥 宗久著 ストレートな題名に惹かれて読みだしたのだが、わが頭脳には手に余る内容。読了してはっきりしたことは、著者の言葉どおり「『あの世』も『魂』も物象化のクセが抜けない頭では把握出来ない」ということ。ただ最先端の…

霜夜

珍しく暖かい一日。空も晴れて青が眩しい。暖かいうちに師走らしいことをしようと風呂場の掃除。一番よく見える読書用の眼鏡をかけて見たら綺麗だと思った天井にカビ。脚立を持ち込んで奮闘したがすっきりとはいかず。この眼鏡で鏡の顔をみたら、こちらもぎ…

枯菊

師走入り。仕事のあった去年までは何かと忙しい12月であったが、時間たっぷりの今年は何ということはないはず。でも、気分的に忙しない思いがするのは長年の習性かもしれない。 関川夏央さんの「汽車旅放浪記」もう少しで読了。関川さんらしい郷愁を帯びた…

冬の日

「丘の上のバカ」 高橋 源一郎著 ものを書くにも書く人の姿勢というのは現れるものだと思う。図らずもこの本で取り上げられているオバマさんの広島での演説がアメリカ大統領という公人としての姿勢をはみださなかったように。(あの演説にはなんとなく違和感…

冬菊

今日、二十四節気のひとつ「小雪」寒く少し雪降るころの謂。ところが、実際には暑いほどの陽気。昼の時間で室内で21度あり。 今朝の「津波」のニュースには肝を冷やした。原発の冷却水が止まったという報道もあり五年前の悪夢が蘇ったが大過なく終わったよ…

葛湯

「鉄道旅へ行ってきます」 酒井純子・関川夏央・原武史著 前半が鼎談形式のレポートで後半は各自のひとり旅レポートである。どちらかというと後半の方が旅の報告としては面白かったが、前半にも興味を覚えた章はあり。一番は地元の名古屋鉄道の乗車記録。「…

冷え

米国での思いも掛けぬ結果。反グローバルリズム・保護貿易主義・移民排斥主義・人種差別主義等々、嫌な言葉が溢れていた今日の新聞。これから世の中はどう動いていくのか、重苦しい気分にさせられる。「寝台特急『昭和』行」 関川 夏央著 予報どおり寒くなり…

木守柿

「ボケてたまるか!」山本朋史著 「62歳記者認知症早期治療実体験ルポ」と副題がある。この方の顔はテレビで見たことがある。軽度の認知症と自認しておられる。医師に勧められてデイケアで認知力アップトレーニングに励む。ゲーム・筋トレ・美術療法・シナ…

秋の暮

近頃は新聞を取らない家が増えてきたようだが、朝一番カフェ・オ・レと新聞は欠かせない。それにしてもこの頃、朝から重い気分になる記事が多い。日本が世界的な良識というか正義に後ろ向きになっているのではないかと思うからである。 ひとつが先日の「核兵…

「狩りの時代」 津島 祐子著 二月に亡くなった津島祐子さんの絶筆である。テーマは差別。ダウン症の兄を持った女性が主人公。世間に感じた息苦しさ、分かり合っているような身内にすらある偏見、ナチスが障害のある人々に貼り付けた「不適格者」という言葉に…

秋深し

「落陽」 朝井まかて著 新国立競技場の建設に絡んで明治神宮の森が話題になったのは去年であったか。あの壮大な森が百年近い年月をかけた「人工の森」だと知ったのもそのころであったように思う。人工の森の出発点がどんなものであったか、その取り組みに人…

秋の蜂

「漱石の思い出」 夏目 鏡子述・松岡 譲筆録 少し前に友人のYから薦められたが、図書館になかったので忘れていた。テレビのドラマで「漱石の妻」なるものをやっていて思い出した次第。すぐにネットで購入。さすがYのお薦めだけあり無類に面白い。よく漱石の…

木の実落つ

「日本人は人を殺しに行くのか」 伊勢崎 賢治著 少し前の出版(2014年発行)である。伊勢崎さんは自ら「紛争屋」と称するように、国際NGOの職員として世界各地の紛争現場で紛争処理や武装解除に携わってきた方である。したがってその経験に裏打ちされた…

秋雨

「人間晩年図巻 1995−99年」 関川夏央著 題名のとおり1995年から99年に人生を終えた人35人、その事績と死に繋がる晩年の顛末を描いたものである。よく知っている人もいれば、あまり知らない人もいる。良くも悪くもなべて密度の高い人生を送っ…

秋彼岸

秋雨前線の停滞で台風一過の秋天とならず。風の道からは逸れたがいっとき案外吹いたらしく畑はぐしゃぐしゃ。丈のあるコスモス、ひまわり、紫苑などは軒並み倒れるか傾いでいる。今日も雨がちで墓参りに出かけるタイミングが難しい。 若山牧水「みなかみ紀行…

秋黴雨(あきついり)

「古代国家はいつ成立したか」 都出比呂志著 第一回古代歴史文化賞大賞受賞の書籍である。古代歴史文化賞とは島根県の主催する賞で「古代歴史文化に関する優れた書籍を表彰する」ものらしい。要旨はは考古学の成果をもとに「古代国家に至る初期国家の成立を…

新涼

「見仏記 ゴールデンガイド篇」 いとうせいこう・みうらじゅん著 このシリーズが図書館の棚を占めているのは前々から承知していたが、お二人の個性に圧倒されて手が出なかった。が、この度行きそこねた播州の寺の話があり、予習のために借りてきた。 こちら…

蕎麦の花

「飛鳥」 和田 萃著 H殿が飛鳥に行きたいと言う。かっては「飛鳥古京を守る会」にも参加、何度も出かけた飛鳥だが熱の覚めたこの何年かは訪問していない。「彼岸花の綺麗なときが一番」となり、再度飛鳥についての学習となった。 飛鳥が栄えたのは七世紀、聖…

青林檎

「荒地の恋」 ねじめ 正一著 傑作だと聞いていたので図書館の棚に見つけて借りてきた。「荒地」の詩人たちが実名で登場する。中心は北村太郎。あと田村隆一、鮎川信夫、中桐雅夫、加島祥造、凡人にはわからぬ、みんな業の深い人種だ。話は面白かったが読後感…

稲の花

「里の時間」芥川 仁・阿部 直美著 先日テレビを見ていたら、都会から引っ越して田舎暮らしを始めた人が、「便利は忙しすぎる」と言っていた。この本は経済的効率化に毒されているような時代だからこそ、ゆったりと時間の流れる里暮らしをと、レポートしたも…

「コンビニ人間」 村田 紗耶香著 H殿が珍しく「芥川賞を読む」などと言って文芸春秋を買ってきた。こんなことは学生時代以来ではないかとびっくり。読み終わったようなので「どうだった」と聞いたら、「面白かった」というから借りた。 子供の頃から自分の行…

「へたも絵のうち」 熊谷 守一著 熊谷さんは岐阜県生まれだから県の美術館が所蔵する作品があり、展覧会も開かれたりしてその絵には案外親しい。中でも好きなものは晩年の抽象画と思えるほど単純化された表現のものだ。感動の心髄が結晶化したような作品で、…

水を打つ

「夜と霧」 ヴィウトール・E・フランクル著 池田香代子訳の新版である。河野の本で取り上げられた霜山訳とは多少ちがうところがあるような気がした。あとがきで訳者も旧版とはかなりの異同があると述べているが、読み比べていないのでよくはわからない。ただ…

夏の雲

「ここが私の東京」岡崎 武志著 取り上げられた人物は筆者を含め十一人。佐藤泰志・出久根達郎・庄野潤三・開高健・藤子不二雄A・司修・松任谷由美・友部正人・富岡多恵子・石田波郷。 松任谷をのぞき、みな地方出身者、東京に夢を託して上京した面々である…

甚平

「フランクル『夜と霧』への旅 河原理子著 実はフランクルのこの有名な本をまだ読んでない。ずっとナチスの暴虐を告発する本だと思い,気が重くて読む気になれなかった。昔、アウシュビッツなどの写真集を高校の図書館で見たことがあった。その時の衝撃的な画…

夏休み

「チェリー・イングラムー日本の桜を救ったイギリス人」阿部菜穂子著 桜は日本人ならだれでもその開花に胸を躍らせる花であり、国花とするに異存のない花でもある。しかし一般的に私達が思い描くのは華やかに咲き、一斉に散るソメイヨシノでそれ以外の桜につ…

今日は大暑。高島暦に「蒸熱酷暑を感ず」とある。最も暑い頃ということか。 昨日は三ヶ月ごとのOB会の日。食事の後のおしゃべりは行き着くところは老いの日々をいかに過ごすかと生前整理の話。生産的ではないが、みんな元気で楽しいひとときが持てただけで良…

水遊び

「伊藤ふきげん製作所」 伊藤 比呂美著 先日、伊藤さんの本を読んでえらく感動していたから「こんなのもあるよ」とTが貸してくれた一冊。伊藤さんのぶっちゃけ子育て奮戦記といったもの。娘さんたちの思春期に大いに手こずったという話なのだが、多分かなり…

蟻の列

「会津物語」 赤坂 憲雄+会津学研究会編著 会津学研究会とは民俗学者の赤坂さんの呼びかけで誕生した市井の人々の学びの場である。「遠野物語」や「老媼茶話」ー会津地方の奇談集ーに影響を受けたこの会のメンバーたちが、会津各地の不思議な話を採録したの…

サングラス

「どくとるマンボウ航海記」 北 杜夫著 半世紀も前の海外旅行記である。なんで今更というところだが、未読であった。新聞の書評欄で島田雅彦が「著者もふき出すとぼけた見聞録」と書いていたので、俄然読みたくなった。すぐにキンドルで買って正解。三分の二…

日焼け

「父の生きる」伊藤 比呂美著 読み終えて涙が出てきた。汗といっしょにジャブジャブと顔を洗いながら、何で泣けるんだろうと考えていた。親を看取た後の比呂美さんの悔いに自分を重ねているところもあった。比呂美さんのお父さんに父の晩年や姉の老いを重ね…

明け易し

「日本近代随筆選 3思い出の扉」 先の二巻に続き三冊目である。思い出というコンセプトで、人や動物、酒、食べ物などへの思いを書いた三十八編。やはり人を語ったものが心に残る。対象は大抵は亡き人で、筆を通して生前の交情がありありとわかり、その哀し…

蛞蝓(’なめくぢり)

「神社の起源と古代朝鮮」 岡谷 公二著 もう少し知りたいと、また神様について。 本書は、我が国の神様の多くが渡来系の人々の神様を起源にしているのではないかと述べたもの。身近な八幡様やお稲荷様が渡来系であることは知っていたが、それ以外にも多くの…

梅雨深し

「日本の神々」 谷川 健一著 本居宣長は「古事記伝」で日本のカミを「可畏き(かしこき)もの」と言い、谷川はそれをみごとな定義だとしている。原初のカミは例えば風であり、獣であり、稲の精霊であり、祖先の死霊あり、人にに災いをもたらすもの、あるいは…

夏至

「日本近代随筆選 2 大地の声」 先のシリーズの二冊目である。明治から戦後までの名だたる名文家の随筆四十編が選ばれている。一冊目より選集の意図が明確で、心惹かれる作品も多かった。春から冬へと季節の移り変わりに題材を得た作品は二十編どれもが散文…

梅雨

「ニッポン周遊記」 池内 紀著 池内さんの紀行文が好きだ。読書ノートを繰るとこの五年ほどの間に7冊も読んでいる。中には、刺激されて旅程に組み込んだ所もある。多分宮城県の登米などは、はるばる出かけた一例だと思う。巧みな文章の紹介で今回の30の町…

南風(みなみ)

「明日」 井上 光晴著 昨日借りてきて、一気に読んだ。寂聴さんの紹介にもあったとおり、長崎に原爆が投下された前日の話である。戦時下で不自由ながらも挙げられた祝言。そこに集った人々の一日。だれも明日訪れる運命を知らない。長引く戦争に心を痛めつつ…

植田

「日本の地名」 谷川 健一著 「地名はかっての庶民の暮しをいつまでも伝えている」この本の主旨はその一行に尽きる。「青」のつく地名から黒潮に乗って遥か南から北へ移動していった人々がいたこと、地名で辿る天竜峡から八代まで中央構造線づたいに展開した…

六月

「美女という災難」❜08年版ベスト・エッセイ集 長年、日本エッセイスト・クラブ編の年間ベスト・エッセイ集を愛読してきた。このところ見かけないと思ったら❜11年でこの企画が終了していた。これは読み落としていた少し前の作品集である。 エッセイが好…

ががんぼ

「こころのおまもり」仏教的<自然体>の手ほどき 小池龍之介著 若い禅僧による心の平安のための処方箋。難しいことを分かりやすく解説。表紙裏の簡単な説明を引用すれば「『今は喜』『今は怒』『今は哀』『今は楽』。自分の感情の動きを、ただ『気づいて、…