読書

『絶版殺人事件』 ピエール・ヴェリー著 佐藤 絵里訳 図書館の新刊コーナーで立派なミステリー本を見つけ、雨のつれづれに読む。作者はフランス人、作品は第一回フランス冒険小説大賞を受賞とある三十年前の作品だ。 謎を解くのはフランス人の引退した古文書…

梅雨長し

『アジア海道紀行』 佐々木 幹郎著 県の図書館で未読の佐々木さんの本と久しぶりに出会った。この人の書きっぷりが好きなのだが最近はどうしておられるのかなかなか出会わない。この本とて発刊は古いといえば古い。 海道紀行というのは鑑真などの足跡を辿り…

青大将

『天野 忠随筆選』 山田 稔選 天野さんの既刊の随筆集をもとに山田さんが編まれた随筆集である。天野さんの詩集は先に読んだが特に心に残っのは老妻ものだ。これは随筆集であり詩集とはまた違った趣があるに違いない。 あとがきで山田さんは、「何でもないこ…

梅雨晴れ間

『父を焼く』 上野英信と筑豊 上野 朱著 戦後、筑豊の地で地域に根付いた文化活動に力を尽くした上野英信氏のご子息による回想譚である。谷川雁や森崎和江の名前は知っていたが正直に言って上野氏のことはよく知らなかった。今回これを読んで並々ならぬ信念…

梅雨空

『浄瑠璃を読もう』 橋本 治著 橋本さんのやさしく教えてくださる古典シリーズの一冊である。春の旅で淡路島で人形浄瑠璃を見てから気になっていた「文楽」という日本の古典芸能、この際勉強しようと読み始めたのだがなかなか進まない。やっと三大名作と言わ…

蝸牛

『誘拐』 本田 靖春著 Tが古本屋から仕入れてきた一冊で一時代前のドキュメンタリーの名作らしい。(文藝春秋読者賞・講談社出版文化賞)若い人成らずとも今の人は知らないだろうが「吉展ちゃん」という名前を当方などはしっかり覚えている。昭和37年、先…

浮いてこい

『新訳 説教節』 伊藤 比呂美著 説経節に惚れた惚れたという伊藤さんの熱意に煽られて、説経節とはいかなるものやと手にしたこの本。「小栗判官」も「しんとく丸」も、みめ麗しき貴公子や深窓の姫君が思わぬ不幸に陥いるが、神仏の助けでめでたしめでたしと…

夏至

『消えた国 追われた人々』 東プロシアの旅 池内 紀著 Tが読んでいて面白そうだったから回してもらった一冊。読み応えのある話だった。かって「東プロシア」という国があったということも、その国の消滅に際して多くの人々が難民となったことも、また難民を…

川とんぼ

『最後の読書』 津野 海太郎著 津野さんの生年は1938年とあるから当方とはたった7歳しか違わない。「老人、老人」と言われると現実なのだが他人事みたい。あとがきに 鶴見さんの「最後の読書」ーそれをみちびきの杖に、それにすがってあたりを慢歩する…

茂り

『龍太語る』 飯田 龍太・飯田 秀實監修 この本は龍太さんの晩年の聞き書きを纏めたもので生涯にわたる思い出話である。読んでいると龍太さんの人となりがわかってくる。華奢な体躯には似合わず豪胆で気骨があるとか、もちろんそれは『雲母』をスパッと終刊…

梅雨入り

『東海道ふたり旅』 池内 紀著 「ふたり旅」のお相手とはどうやら「広重」らしい。副題に「道の文化史」とある。広重の「東海道五十三次」を行きつ戻りつしながら、当時の風俗・経済・文化などなどを紹介。例により語り口は歯切れのよい池内調で、知らず知ら…

五月尽

昨日から何度もモズ君が子ども連れで里帰りだ。連れている子モズは一羽だけだがおそらく一番の甘えん坊にちがいない。飛び慣れた梅の枝を枝移りしながらまだ羽をばたつかせて餌をねだっている。さすがに親モズも知らんぷりといった様子だったが見てないとこ…

夏の川

『暮らしの断片』 金井美恵子=文 金井久美子=絵 「暮らしの断片」とあるだけに暮らしのなかのこだわりについてつづた文章である。そこは金井さんらしくあとがきで、最近の女性向きメディアで流行語になっている「ていねいな暮らし」つまりすてきな暮らしを…

雨蛙

『これで古典がよくわかる』 橋本 治著 どういうわけだか昨夜は眠気がなかなか訪れなくて、夜半すぎまでかかってこの本を読了してしまった。橋本さんの言葉によれば、古典に嫌気がさしているにちがいない受験生が対象ということで、誠にわかりやすい。いいお…

聖五月

降りそうで降らない。先週は珍しく体調を崩し発熱。ウオーキングもしなかったが少し気力も戻ってきたので曇天を幸いに歩く。用水の水はたばしっているがまだ田には入っていない。この辺りはいつも遅いのだ。 庭の花十指に余り聖五月 今日出会った子。野良の…

山藤

『三つ編み』 レティシア・コロンバニ著 斉藤可津子訳 国も境遇も全く違う三人の女性の話を「三つ編み」のようにあざなった物語。キイワードは髪と自立。歯切れのよい畳み掛けるような文体と素早い展開で一気に読ませる。帯によればフランスで85万部突破3…

薔薇

『百人一首がよくわかる』 橋本 治著 いつも拝見しているブログで新潮社「Webでも考える人」というサイトを教えていただき、そこで津野梅太郎さんの橋本治さん追悼文を読んだ。津野さんは内田樹さんの言葉を引いて そのつど「説得でも教化でも啓蒙でもない」…

椎の花

『モンテレッジオ小さな村の旅する本屋の物語』 内田 洋子著 きっかけは「ヴェネツィアの水先案内人であり知恵袋である」老舗の古本屋の始まりが、山岳地帯の辺鄙な土地モンテレッジオ出身の本の行商人と知ったことだ。「本の行商人とは」彼女の興味はそこか…

春逝く

『山海記』 佐伯 一麦著 大和八木から和歌山の新宮まで日本一長い路線バスのことは本で読んだり映像で見たりしたことがある。筆者とおぼしき彼は東北大震災の後、同じ年に大水害にあった紀伊半島を訪ねるべくこのバスに乗った。小雪も舞う狭隘な山道をバスに…

行く春

『アイヌ歳時記』 萱野 茂著 再びこの本について。読みながらアイヌの人と縄文人の関係に思いを馳せる。同じように狩猟採集民でありアミニズムの人々であり、かっての東北地方では隣り合って暮らした人々であっただろう。最近の遺伝子調査では「アイヌ人は現…

春霞

『アイヌ歳時記』 二風谷のくらしと心 萱野茂著 どういうわけだかこんなことは滅多にないのに昨夜はとんと寝つけなかった。蒲団の中でもんもんとして夜半を過ぎ、とうとう起き出してこの本を読み始めた。 ちょうど昨日の新聞に「アイヌ新法 成立」とあったか…

春深し

『カササギ殺人事件 上』 アンソニ・ホロヴィッツ著 山田 蘭訳 新聞の読書欄で知って図書館から借りた。上と下の二巻なのでとりあえず上巻を予約して借りたのだが読み終わっても下巻がすぐに読めないところが残念。まだ予約者五人待ちである。事件が起きて取…

たんぽぽ

『AIvs.教科書が読めない子どもたち』 新井 紀子著 「シンギュラリティー」という言葉を初めて知った。「人工知能(AI)が人間を超えるまで技術が進むタイミング」をいうそうだ。まず著者は「シンギュラリティーは到来しません。」所詮AIは意味がわかって…

『ラニーニャ』 伊藤 比呂美著 この本の中の「ハウス・プラント」と表題にもなっている「ラニーニャ」を読む。どちらも彼女の初期の作品らしい。いつものように彼女自身の暮らしを投影した作品で、前者は最初のご亭主と別れて渡米した頃、後者はそのもう少し…

春の野

春休みの一日をさいてY一家が来てくれた。昔から上の孫が来ると雨になる確率が高く、今回もまさかの曇のち雨。花見には生憎である。それでもと昼食の後近くの白山神社に寄る。花見に来る人がいるわけでもない神社だが、山を背後に長い参道があり森厳とした趣…

木蓮

春はお定まりのように風が強いが陽気はすっかり春めいてきた。ミシンを梱包してクロネコさんの集荷所まで持っていき、買い物をして図書館による。図書館周辺の川べりの桜はすでに満開もある。ソメイヨシノはまだなのでおそらく早咲きのものにちがいない。公…

雪柳

『旅の終わりに』 マイケル・ザドゥリアン著 小梨直訳 ジョンとエマは80歳を超えた老夫婦。そのうえジョンは軽い認知症でエマは末期癌を患っている。この二人が周囲の反対を押し切ってというより反対する周囲に内緒で人生最後の旅に出る。行く先はデズニー…

囀り

『縄文時代の歴史』 山田 康弘著 縄文人はジャパンオリジナルであると言う。この国の先住民であったことは間違いない。1万4000年ほど長きに渡りユニークな表現物を残した彼らは、一体どうなったか。 縄文人は決して絶滅してしまったわけではなかった。…

春の風

『万葉の人びと』 犬養 孝著 昔、姉に誘われて「飛鳥古京を守る会」というグループに参加していたことがある。その会を創られた有志のひとりが犬養先生で、年に二回ほど「万葉旅行」というものがあった。仕事の都合などで二・三回しか参加していないが万葉集…

桜餅

『いのちの旅』 原田 正純著 筆者は神経精神医学の医師で半世紀近く水俣病の患者に寄り添ってきた方である。この本は新聞に掲載された小編を集めたもので全体として非常に読みやすい。初めは水俣病の話から始まるが、あとは国内から国外まであらゆる汚染現場…