読書

夏の川

『暮らしの断片』 金井美恵子=文 金井久美子=絵 「暮らしの断片」とあるだけに暮らしのなかのこだわりについてつづた文章である。そこは金井さんらしくあとがきで、最近の女性向きメディアで流行語になっている「ていねいな暮らし」つまりすてきな暮らしを…

雨蛙

『これで古典がよくわかる』 橋本 治著 どういうわけだか昨夜は眠気がなかなか訪れなくて、夜半すぎまでかかってこの本を読了してしまった。橋本さんの言葉によれば、古典に嫌気がさしているにちがいない受験生が対象ということで、誠にわかりやすい。いいお…

聖五月

降りそうで降らない。先週は珍しく体調を崩し発熱。ウオーキングもしなかったが少し気力も戻ってきたので曇天を幸いに歩く。用水の水はたばしっているがまだ田には入っていない。この辺りはいつも遅いのだ。 庭の花十指に余り聖五月 今日出会った子。野良の…

山藤

『三つ編み』 レティシア・コロンバニ著 斉藤可津子訳 国も境遇も全く違う三人の女性の話を「三つ編み」のようにあざなった物語。キイワードは髪と自立。歯切れのよい畳み掛けるような文体と素早い展開で一気に読ませる。帯によればフランスで85万部突破3…

薔薇

『百人一首がよくわかる』 橋本 治著 いつも拝見しているブログで新潮社「Webでも考える人」というサイトを教えていただき、そこで津野梅太郎さんの橋本治さん追悼文を読んだ。津野さんは内田樹さんの言葉を引いて そのつど「説得でも教化でも啓蒙でもない」…

椎の花

『モンテレッジオ小さな村の旅する本屋の物語』 内田 洋子著 きっかけは「ヴェネツィアの水先案内人であり知恵袋である」老舗の古本屋の始まりが、山岳地帯の辺鄙な土地モンテレッジオ出身の本の行商人と知ったことだ。「本の行商人とは」彼女の興味はそこか…

春逝く

『山海記』 佐伯 一麦著 大和八木から和歌山の新宮まで日本一長い路線バスのことは本で読んだり映像で見たりしたことがある。筆者とおぼしき彼は東北大震災の後、同じ年に大水害にあった紀伊半島を訪ねるべくこのバスに乗った。小雪も舞う狭隘な山道をバスに…

行く春

『アイヌ歳時記』 萱野 茂著 再びこの本について。読みながらアイヌの人と縄文人の関係に思いを馳せる。同じように狩猟採集民でありアミニズムの人々であり、かっての東北地方では隣り合って暮らした人々であっただろう。最近の遺伝子調査では「アイヌ人は現…

春霞

『アイヌ歳時記』 二風谷のくらしと心 萱野茂著 どういうわけだかこんなことは滅多にないのに昨夜はとんと寝つけなかった。蒲団の中でもんもんとして夜半を過ぎ、とうとう起き出してこの本を読み始めた。 ちょうど昨日の新聞に「アイヌ新法 成立」とあったか…

春深し

『カササギ殺人事件 上』 アンソニ・ホロヴィッツ著 山田 蘭訳 新聞の読書欄で知って図書館から借りた。上と下の二巻なのでとりあえず上巻を予約して借りたのだが読み終わっても下巻がすぐに読めないところが残念。まだ予約者五人待ちである。事件が起きて取…

たんぽぽ

『AIvs.教科書が読めない子どもたち』 新井 紀子著 「シンギュラリティー」という言葉を初めて知った。「人工知能(AI)が人間を超えるまで技術が進むタイミング」をいうそうだ。まず著者は「シンギュラリティーは到来しません。」所詮AIは意味がわかって…

『ラニーニャ』 伊藤 比呂美著 この本の中の「ハウス・プラント」と表題にもなっている「ラニーニャ」を読む。どちらも彼女の初期の作品らしい。いつものように彼女自身の暮らしを投影した作品で、前者は最初のご亭主と別れて渡米した頃、後者はそのもう少し…

春の野

春休みの一日をさいてY一家が来てくれた。昔から上の孫が来ると雨になる確率が高く、今回もまさかの曇のち雨。花見には生憎である。それでもと昼食の後近くの白山神社に寄る。花見に来る人がいるわけでもない神社だが、山を背後に長い参道があり森厳とした趣…

木蓮

春はお定まりのように風が強いが陽気はすっかり春めいてきた。ミシンを梱包してクロネコさんの集荷所まで持っていき、買い物をして図書館による。図書館周辺の川べりの桜はすでに満開もある。ソメイヨシノはまだなのでおそらく早咲きのものにちがいない。公…

雪柳

『旅の終わりに』 マイケル・ザドゥリアン著 小梨直訳 ジョンとエマは80歳を超えた老夫婦。そのうえジョンは軽い認知症でエマは末期癌を患っている。この二人が周囲の反対を押し切ってというより反対する周囲に内緒で人生最後の旅に出る。行く先はデズニー…

囀り

『縄文時代の歴史』 山田 康弘著 縄文人はジャパンオリジナルであると言う。この国の先住民であったことは間違いない。1万4000年ほど長きに渡りユニークな表現物を残した彼らは、一体どうなったか。 縄文人は決して絶滅してしまったわけではなかった。…

春の風

『万葉の人びと』 犬養 孝著 昔、姉に誘われて「飛鳥古京を守る会」というグループに参加していたことがある。その会を創られた有志のひとりが犬養先生で、年に二回ほど「万葉旅行」というものがあった。仕事の都合などで二・三回しか参加していないが万葉集…

桜餅

『いのちの旅』 原田 正純著 筆者は神経精神医学の医師で半世紀近く水俣病の患者に寄り添ってきた方である。この本は新聞に掲載された小編を集めたもので全体として非常に読みやすい。初めは水俣病の話から始まるが、あとは国内から国外まであらゆる汚染現場…

春の雨

『死を生きた人びと』 小堀 鴎一郎 筆者は鴎外の孫である。母杏奴さんの著書では快活なユーモアのある青年として出てくる。テレビを見た感想からいえば80歳とはいえユーモアがあり、フットワークも軽く若い日の面影を彷彿とさせる。 さてこの本は定年後に…

初雲雀

このところの暖かさで春が一挙に進んでいる。昨日は初めて雲雀の鳴き声を聞き、今日は初めて紋黄蝶を見た。閉じこもってばかりではとウオーキングも続けているが今日は庭の草引きもした。難解な本よりこの方が合っているかもと思いつつ、前回の続きを。 『陰…

春の川

旧友に習ってウオーキングを始める。もっともまだ体慣らしの程度で大股速歩で15分程度である。始めた昨日は春めいた一日で歩くのには好都合だったが、今日は冷たい風が強い。花粉も飛散してるだろうなと躊躇してしまう。いきなり中止も情けないとマスクに…

春蘭

『柿本人麻呂』 北山 茂夫著 先に読んだ梅原さんの『水底の歌』と同じ年の刊行である。おそらく当時の人麻呂ブームを意識しての出版で、こちらは古代史の学者である。当然ながら正史には記載のない人麻呂であるからその人物像は万葉集の歌をとおしてのものと…

紙鳶(いかのぼり)

『蘇我氏の古代史』 武光 誠著 蘇我氏にはずっと悪いイメージを持っていた。ものの本には「大化の改新」(今は乙巳の変)として中大兄皇子と中臣鎌足に討たれる入鹿の図があったように思う。天皇(このころはまだ大王であった)をないがしろにして専横を極め…

ぼたん雪

『日本史の内幕』 磯田 道史著 今や売れっ子の磯田さんの本である。全体に歴史小話といったもので何ということはないのだが、読後興味をもってネットで調べてみた件が二つある。 沼津の「高尾山古墳」の話と江戸時代の儒学者「中根東里」の話である。前者は…

豆まき

『社をもたない神々』 神崎 宣武著 私の読んでいる本を見てTが買ってきた一冊を先に読ませてもらう。前回のブログで「日本人の宗教的古層はすでに失われたのではないか」と書いたのだが、いやいやどうしてまだまだこんな信仰形態がのこていますよという話だ…

日脚伸ぶ

『あの世」と「この世」のあいだ』 谷川 ゆい著 副題に「たましいのふるさとを探して」とある。「懐かしくて安心できる」そんな安らぎの地を探して各地を訪ね歩いた話である。「安らぎの地」は時には「この世」と「あの世」が隣り合った地だといい、時には自…

大寒

『小岩へ』 島尾 伸三著 著者は島尾敏雄氏とミホさんの長男である。時には投げやりで自虐的とも思える文体からみると、よほどご本人には不本意な執筆らしい。書きたくもない両親のことを書けと言われれば、否が応でも幼年期の不安な気持ちを思い出さずにはい…

春隣

『水底の歌 下巻』 梅原 猛著 前回でも断ったように斜め読みで梅原さんには申し訳がないのだが、それでも実に面白かった。下巻で明らかにされたことを整理すると 1, 正史(続日本紀)に「従四位下柿本佐留卒す」と記載される人物と柿本人麻呂は同じ人物と…

初場所

『水底の歌 上巻』 梅原 猛著 12日、梅原さんが亡くなった。私は哲学者としての梅原さんはよく知らないが、古代学への発言は面白くてその著書も随分興味深く読ませていただいた。『隠された十字架』の聖徳太子鎮魂説や出雲に関する『葬られた王朝』論は文…

山眠る

『雪の階』 奥泉 光著 惹句にミステリーロマンとある。日中戦争開戦前夜を背景に、華族という特権階級に属する女性を主人公にした話である。時代がかった装飾過剰とも思える文体が昭和十年という雰囲気をよくだして歴史ロマンミステリーにふさわしい。「天皇…