読書

雪柳

『旅の終わりに』 マイケル・ザドゥリアン著 小梨直訳 ジョンとエマは80歳を超えた老夫婦。そのうえジョンは軽い認知症でエマは末期癌を患っている。この二人が周囲の反対を押し切ってというより反対する周囲に内緒で人生最後の旅に出る。行く先はデズニー…

囀り

『縄文時代の歴史』 山田 康弘著 縄文人はジャパンオリジナルであると言う。この国の先住民であったことは間違いない。1万4000年ほど長きに渡りユニークな表現物を残した彼らは、一体どうなったか。 縄文人は決して絶滅してしまったわけではなかった。…

春の風

『万葉の人びと』 犬養 孝著 昔、姉に誘われて「飛鳥古京を守る会」というグループに参加していたことがある。その会を創られた有志のひとりが犬養先生で、年に二回ほど「万葉旅行」というものがあった。仕事の都合などで二・三回しか参加していないが万葉集…

桜餅

『いのちの旅』 原田 正純著 筆者は神経精神医学の医師で半世紀近く水俣病の患者に寄り添ってきた方である。この本は新聞に掲載された小編を集めたもので全体として非常に読みやすい。初めは水俣病の話から始まるが、あとは国内から国外まであらゆる汚染現場…

春の雨

『死を生きた人びと』 小堀 鴎一郎 筆者は鴎外の孫である。母杏奴さんの著書では快活なユーモアのある青年として出てくる。テレビを見た感想からいえば80歳とはいえユーモアがあり、フットワークも軽く若い日の面影を彷彿とさせる。 さてこの本は定年後に…

初雲雀

このところの暖かさで春が一挙に進んでいる。昨日は初めて雲雀の鳴き声を聞き、今日は初めて紋黄蝶を見た。閉じこもってばかりではとウオーキングも続けているが今日は庭の草引きもした。難解な本よりこの方が合っているかもと思いつつ、前回の続きを。 『陰…

春の川

旧友に習ってウオーキングを始める。もっともまだ体慣らしの程度で大股速歩で15分程度である。始めた昨日は春めいた一日で歩くのには好都合だったが、今日は冷たい風が強い。花粉も飛散してるだろうなと躊躇してしまう。いきなり中止も情けないとマスクに…

春蘭

『柿本人麻呂』 北山 茂夫著 先に読んだ梅原さんの『水底の歌』と同じ年の刊行である。おそらく当時の人麻呂ブームを意識しての出版で、こちらは古代史の学者である。当然ながら正史には記載のない人麻呂であるからその人物像は万葉集の歌をとおしてのものと…

紙鳶(いかのぼり)

『蘇我氏の古代史』 武光 誠著 蘇我氏にはずっと悪いイメージを持っていた。ものの本には「大化の改新」(今は乙巳の変)として中大兄皇子と中臣鎌足に討たれる入鹿の図があったように思う。天皇(このころはまだ大王であった)をないがしろにして専横を極め…

ぼたん雪

『日本史の内幕』 磯田 道史著 今や売れっ子の磯田さんの本である。全体に歴史小話といったもので何ということはないのだが、読後興味をもってネットで調べてみた件が二つある。 沼津の「高尾山古墳」の話と江戸時代の儒学者「中根東里」の話である。前者は…

豆まき

『社をもたない神々』 神崎 宣武著 私の読んでいる本を見てTが買ってきた一冊を先に読ませてもらう。前回のブログで「日本人の宗教的古層はすでに失われたのではないか」と書いたのだが、いやいやどうしてまだまだこんな信仰形態がのこていますよという話だ…

日脚伸ぶ

『あの世」と「この世」のあいだ』 谷川 ゆい著 副題に「たましいのふるさとを探して」とある。「懐かしくて安心できる」そんな安らぎの地を探して各地を訪ね歩いた話である。「安らぎの地」は時には「この世」と「あの世」が隣り合った地だといい、時には自…

大寒

『小岩へ』 島尾 伸三著 著者は島尾敏雄氏とミホさんの長男である。時には投げやりで自虐的とも思える文体からみると、よほどご本人には不本意な執筆らしい。書きたくもない両親のことを書けと言われれば、否が応でも幼年期の不安な気持ちを思い出さずにはい…

春隣

『水底の歌 下巻』 梅原 猛著 前回でも断ったように斜め読みで梅原さんには申し訳がないのだが、それでも実に面白かった。下巻で明らかにされたことを整理すると 1, 正史(続日本紀)に「従四位下柿本佐留卒す」と記載される人物と柿本人麻呂は同じ人物と…

初場所

『水底の歌 上巻』 梅原 猛著 12日、梅原さんが亡くなった。私は哲学者としての梅原さんはよく知らないが、古代学への発言は面白くてその著書も随分興味深く読ませていただいた。『隠された十字架』の聖徳太子鎮魂説や出雲に関する『葬られた王朝』論は文…

山眠る

『雪の階』 奥泉 光著 惹句にミステリーロマンとある。日中戦争開戦前夜を背景に、華族という特権階級に属する女性を主人公にした話である。時代がかった装飾過剰とも思える文体が昭和十年という雰囲気をよくだして歴史ロマンミステリーにふさわしい。「天皇…

寒さ

『句集 源義の日』 角川 春樹著 父恋母恋姉恋友恋の句集である。おそらく半分以上が身近な亡き人を忍ぶ句なっている。表題からして父角川源義氏の忌日を意識してのことであり当然と言えばそうである。 角川春樹氏と言えば山本健吉氏が『現代俳句』で言葉を極…

鴨の陣

『佐野洋子の「なに食ってんだ」』 佐野洋子 オフィスジロチョー編 佐野さんが亡くなってもう九年もたつのだから今さら新刊本は出ないと思うわけだ。ところがである。もちろんこの本は佐野さんの著作のあちこちからの抜き出しだが、懐かしい佐野さんの語り口…

初湯

『邪馬台国は「朱の王国」だった』 蒲池 明弘著 「朱」とは硫化水銀を主成分とする赤色系の顔料である。火山活動に伴う産物として得られるので火山国の日本ではかっては多くの鉱床があったらしい。「丹生」という地名が各地に見られることや古墳の内部に大量…

年酒

『誕生日の子どもたち』 トルーマン・カポーティ著 村上 春樹訳 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 毎年のことだが三が日もあっという間に過ぎる。迎春準備し、来客を迎え、以前のように身体が動いたことに感謝せねばと思うよう…

数え日

『冬の鷹』 吉村 昭著 関川夏央さんの『昭和時代回想』を拾い読みしていたら「評伝もまた小説たらざるを得ない」という小節で、この本が紹介されていた。「小説と銘打ってはいるが、これほど事実に執着する姿勢をみせた作品はまれだ」というくだりでである。…

柚子湯

帯状疱疹の神経痛が長引いて頻繁に医者通いで気が滅入る。昨日も病院の会計窓口に並んでいたら(昨日は放射線科の先生の診察)列の後ろで爺さんたちが大声で放談するのが聞こえた。久しぶりに病院に来たら人が多いのに驚いたという話から始まって、老人が長…

しぐれ

『山の神』 吉野 裕子著 興味深い話であったがなかなか難しい本でもあった。 「蛇と猪、なぜ山の神はふたつの異なる神格を持つのか」うっかりしていたがヤマトタケルノミコトを死に至らしめた伊吹山の神は、古事記では「白猪」であり日本書紀では「大蛇 オロ…

日短

『それゆけ、ジーヴス』 P・G・ウッドハウス著 森村たまき訳 皇后さまがお誕生日会見で触れられていたので、興味を覚えて借りてきた。まだ読了してはいないが読み通せるか自信がない。つまり内容はユーモア小説ともいうようなもので、あまり趣味ではないから…

聖樹

『83 1/4歳の素晴らしき日々』 ヘンドリック・フルーン著 ヘンドリックの残りの一年間を追体験した。オマニドクラブを立ち上げたヘンドリックたちは半月に一度のエクスカーションを企画し、映画会や動物園訪問・料理や絵画のワークショップなど楽しい時間…

寒波来る

83 1/4歳の素晴らしき日々 ヘンドリック・フルーン著 長山さき訳 帯状疱疹で額から瞼が腫れ上がりまるでお岩さん。片目が十分機能しなくて不便極まりない。それよりも痛みが酷いので「老人には強すぎるが」と、もう少し強い痛み止めを出してもらう。ところ…

『俳句の授業』 夏井 いつき著 「プレバト」なる番組を見たことがない。夏井さん自身についてもご本人も俳句もよく知らなかった。最近あちこちで名前を見るようになり元気のいい方だなあという印象があった。たまたま図書館でこの本を見つけて借りてきたのだ…

吊し柿

『砂の街路図』 佐々木 譲著 先々週ぐらいの新聞の読書欄に紹介されていたので読んだ。こういう作品はどの分野に入るのかわからないがミステリー要素のあるエンタテイメントといったらいいだろうか。帯には「家族ミステリー」とある。 突然行方を絶った父親…

山眠る

『狂うひと』 「死の棘」の妻・島尾ミホ 梯 久美子著 その2 やっと読了。大変な力作である。執筆に際しての当人へのインタビューは初期の段階で拒否されたということで膨大な資料を読み込んでの人物造形である。長大な内容にもかかわらず最後まで惹きつけら…

『狂うひと』「死の棘」の妻・島尾ミホ 梯 久美子著 その1 600ページ強の大作でなかなか読み終えられない。運命の日が来て夫婦の対決が激化し、とうとうミホさんが精神病棟に入院するくだりまでは読んだ。 ここまでで考えさせられるのは「文学と人間性」…