暖房

『ナガサキ』 スーザン・サザード著 宇治川康江訳 著者は若い日に留学生として来日。修学旅行で長崎を訪れ初めて原爆の被害ということを知ったと言う。その後たまたま被爆者の谷口稜曄氏のアメリカ講演ツアーの通訳を引き受けることになり彼をはじめとする被…

年忘れ

物損事故をやらかした。 高校から大学とずっとくっついていた旧友と三年ぶりぐらいに会うことになり車ででかけた。コーヒー店の駐車場で、どうしてそんなことになったのかよくわからないままに止まっている他人の車にこすった。気持ちが上ずっていたからだろ…

木守柿

『掃除婦のための手引き書』 ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳 Tが借りてきたのを返却前に回してもらう。近頃話題の本らしいが、書かれたのは少し前ですでに筆者は故人だ。短篇集だがすべてが彼女自身の投影らしい。実に起伏にとんだ人生を送った人のようで…

時雨

『ハーメルンの笛吹き男』 阿部 謹也著 この本の新装版がベストセラーであるらしい。ハーメルンの伝説の真相に迫ったものらしく、面白そうだ。買うか借りるか検討をしていたらTが家にあると言う。ずいぶんと古い本で読みにくそうだがせっかくだからとそれを…

冬ざるる

『完璧な病室』 小川 洋子著 病院での待ち時間を消化するためにTの本棚から拝借。診察を待ちながら病院で亡くなる人の話を読むのもどうかなと思いつつ読む。芥川賞を受賞する前の初期の作品である。この人の本はそれほど読んだわけではないが、この人らしい…

暮早し

再発決定 内視鏡検査ではよくわからなかったがPET検査でははっきりと確認されて再発が決定的となった。内視鏡ではわからないほどだからまだ小さいが、転移をする前にと早々と年明けに手術をすることとなる。先に怪しいと言われた時から覚悟をしていたのであ…

白菜畑

『やわらかく、壊れる』 佐々木 幹郎著 久しぶりに図書館で佐々木さんの本を見つけた。もっとも随分と前のものである。 大半は都市に関わる話、ことに半分は東京讃歌である。あとは1983年に始まった中野刑務所の解体工事に伴い、設計者後藤慶二やその特…

落葉掻き

今朝の我が家の寒暖計の最低気温は4.5度。霜も初氷もまだだがさすがに寒くなってきた。いつ霜が降りてもいいようにこの二・三日でしっかり庭の冬支度はしたのでそれは安心。といってもたいしたことではないが寒さに弱いものは室内に取り込んだり軒下に入…

涸川

『日本浄土』 藤原 新也著 紀行文が好きである。図書館の棚に一冊だけ表紙を表向けにして飾られていたから借りてくる。 「今日、佳景に出会うことは大海に針をひろうがごとくますます至難になりつつあるのだ。」という筆者。それでも「うしなわれつつある風…

山茶花

そうまでするか いつもこの欄にコメントをお寄せくださるふきのとうさんに習って「そうまでするか」をいたしました。気にいっていた古シャツをカットして、使い残りの紺の木綿地と合わせて胸当てエプロンにしてみました。 ジョキジョキ切ったら捨て切れなか…

暮早し

『空爆下のユーゴスラビア』 ペーター・ハントケ著 元吉 瑞枝訳 今年のノーベル文学賞の受賞者はペーター・ハントケであるが、彼の受賞については様々に反発する声があると池澤夏樹さんが書いている。(「朝日新聞」11月6日朝刊) NATOによるユーゴの空爆…

黄落

名古屋市博物館へ Yから連絡があり、下の孫のお習字が展示されているというので名古屋市博物館に出かける。三つ上の兄もやはり展示されたので兄に負けずと張り切って書いたものらしい。兄だけ見て弟のは見ないわけには行かまいとはるばる出かけたわけだが平…

小六月

『煤の中のマリア』 石牟礼 道子著 水俣病患者の支援活動を通して、石牟礼さんは人間性のなかの聖性ということに惹かれるようになったという。救いのない殉教に身を投じた島原の乱の人々について綴ろうと取材を重ねた道行きが第一章「草の道ー島原の乱紀行」…

冬に入る

『市場界隈』 橋本 倫史著 沖縄の旅の最終章、那覇空港の本屋さんで購入した。那覇市の第一牧志公設市場界隈の人々に取材して紹介した本である。 「1950年に牧志公設市場が開設された。現在の建物は1972年に建設されたものだが、老朽化が進み、20…

仏桑花(ぶっそうげ)

沖縄 三日目 予定していた首里城も那覇歴史博物館もだめで、さて半日どうするかということになる。ともかく街歩きをしようとまずは国際通りへ。さすがに朝早く昨夜の喧騒はない。本屋でもあれば「沖縄本」でもと思うが,見当たらない。(後で空港の本屋で買っ…

秋の蝉

沖縄 二日目 二日目はもっぱら北部の観光をしようと恩納村のリゾートホテルに泊まる。さすがにビーチで泳ぐ人はいないが水上バイクなどに乗る人はいるようだ。まだまだ暑い。H殿はジンベイザメ模様のTシャツなどを着てすっかりリゾート気分だ。そのくせでき…

秋澄む

沖縄 慰霊と観光と旧交を温める旅 初めて家族で沖縄に行ってきた。沖縄に学生時代の寮友がいるH殿は前々から行きたがっていたのだが、こちらの気が乗らなくてのびのびになっていた。やっとその気になってプランを立てたら今回の首里城の災難である。間が悪い…

秋深し

『エストニア紀行』 梨木 香歩著 エストニアはいわゆるバルト三国のうちの一番北の国である。首都はタリン、面積は九州ほどで人口は沖縄県よりやや少ない。IT化が進んでおり安全で報道の自由なども高い国だという。長い間他国に支配された歴史をもち、中でも…

秋没日(あきいりひ)

今朝起きるなり沖縄首里城全焼とのニュースがショック。実は来週家族で初めて沖縄を訪れる予定であり当然首里城の見学も日程に入っていた。何ということか、言葉を失う。 ほぼ二年ぶりに養護施設に姉を訪問する。前もって甥に様子を聞いてはいたが、どんなに…

そぞろ寒

朝から雨で気温が上がらず初めて暖房を入れる。 さて、このところ「食洗機」を入れようということでバタバタしている。食後、お尻の重い当方を見かねたこととこちらが入院中に片付けだけは面倒だったというTの意見を汲んでのH殿のおもいやり?である。 とこ…

朝寒し

『文学フシギ帖』 池内 紀著 池内さんファンとしては読んでいてもよさそうなのに読んだ覚えがない。いつものごとく畳み掛けるような歯切れのよい語りっぷりと引き出しの多さに感嘆。 「日本の文学百年を読む」と題して鴎外から村上春樹まで五十三人の作家を…

長き夜

夏の頃に予約しておいた「東西落語名人会」に出かける。今回は三遊亭円楽さんと桂文珍さん。笑った、笑った、大いに笑った。円楽さんは体調が悪いように聞いていたが、自虐ネタで病気のことも取り上げておられたくらいだからもう大丈夫にちがいない。演目は…

金木犀

『パンと野いちご』 山崎 佳代子著 副題に「戦火のセルビア、食物の記憶」とある。その名のとおりセルビアの内戦で難民とならざるをえなかった人々が苦しかった状況の中で日々何を食べてをのりこえてきたかということへの聞き書きである。恥ずかしいことだが…

秋の暮

『神戸・続神戸』 西東 三鬼著 書下ろしが昭和29年から昭和34年とあるから随分古いものである。今になってなぜ出されたのかその辺りの事情はわからないがその価値は十分あるほど面白い。何が面白いかといってひとつには三鬼の無頼ともいっていい生き方、…

小鳥来る

『やがて満ちてくる光の』 梨木 香歩著 新聞の書評欄で作家の室田玲子さんが「生活のヒトコマにきらめく叡智」と題して紹介されていた。「身近な生活のヒトコマから紡いだ随想が静かな筆致で語られる。そしてときおり叡智がきらめく」実に適確な書評で流石に…

冬瓜

「あんた 大きい冬瓜でもいい?」と夕方玄関からいきなりの大声。いつも冬瓜をくださる隣の畑のIさん。もう八十は越えておられるがすごぶる元気。 「いつもいつも悪いからいいわ」と言うと「なんでそんなこと言うの?食べてよ!」と怒ったように怒鳴られる。…

花芒

『小さな町』 小山 清著 小山が生涯に書いたものは五十編弱でそのほとんどが短篇だという。この本に収録されたのは十編。彼自身の短いあとがきによれば、戦争中東京の下町で新聞配達をしたことや、戦後北海道の夕張炭鉱で炭鉱夫したことに取材した作品群とい…

曼珠沙華

『ベオグラード日記』 山崎 佳代子著 久しぶりに引き込まれて読了。筆者のことはもちろんベオグラードという地名にも馴染みがなかった。ベオグラードというのはセルビア共和国の首都、かってはユーゴスラビアの首都という。バルカン半島の複雑な政争で今はセ…

秋風

「秋は夕暮れ 夕日のさして山のはいとちかうなりたるに からすのねどころへ行くとて みつよつ ふたつみつなどとびいそぐさへあはれなり」 よく知られた『枕草子』の一部である。 やっと猛暑も抜けてきて朝晩はことに過ごしやすくなった。夕方、暮れかける前…

ちちろ

『短篇礼讃』 忘れかけた名品 大川 渉編 またまたTの未読本の書棚から出してくる。book/offの500円のシールが貼られているので古本としては少しお高いほうか。 「類まれななる才能を十分開花させることなく早世した作家たちの心癒やされる短篇」とある。 …