春耕

十年ぶりぐらいに旧友と会う。彼女は昔の職場の同僚で私より九歳ほど若いのだが気立てのいい人でよく気が合った。最近はご無沙汰していたのだが年賀状でこちらの罹病を知って連絡をくれた。久しぶりに随分おしゃべりをして私としては二つの教訓を得た。一つ…

春蘭

『柿本人麻呂』 北山 茂夫著 先に読んだ梅原さんの『水底の歌』と同じ年の刊行である。おそらく当時の人麻呂ブームを意識しての出版で、こちらは古代史の学者である。当然ながら正史には記載のない人麻呂であるからその人物像は万葉集の歌をとおしてのものと…

春めく

鳥の本によれば鵯は年中いる「留鳥」なのだが、毎年春先のこの時期は一挙に増える。2・3日前からいやに騒がしいと思っていたが今日などは何十羽というほどの数だ。初めはお隣のモチの木の実を啄んでいたと思ったら今度は家の蜜柑だ。充分ジュースにしたか…

囀り

一週間前のMRIの結果を聞きに行く。病院は今までになく混み合っており待合室の椅子も探さなければないほど。用心にマスクを取り出して掛ける。だれも同じ気持ちらしくみんなマスクをしている。指定時間から一時間も遅れてやっと呼ばれる。 結果はいいと言え…

紙鳶(いかのぼり)

『蘇我氏の古代史』 武光 誠著 蘇我氏にはずっと悪いイメージを持っていた。ものの本には「大化の改新」(今は乙巳の変)として中大兄皇子と中臣鎌足に討たれる入鹿の図があったように思う。天皇(このころはまだ大王であった)をないがしろにして専横を極め…

ぼたん雪

『日本史の内幕』 磯田 道史著 今や売れっ子の磯田さんの本である。全体に歴史小話といったもので何ということはないのだが、読後興味をもってネットで調べてみた件が二つある。 沼津の「高尾山古墳」の話と江戸時代の儒学者「中根東里」の話である。前者は…

春立つ

十二月以来の病院である。今日はMRIの検査ということで出かける。MRIは昨年の四月に一度体験ずみである。痛くも痒くもないがドームに閉じ込められて30分は我慢しなければならない。ガンガンザーザーと大きな音が激しい。ボーッと空想などさせてはくれない…

豆まき

『社をもたない神々』 神崎 宣武著 私の読んでいる本を見てTが買ってきた一冊を先に読ませてもらう。前回のブログで「日本人の宗教的古層はすでに失われたのではないか」と書いたのだが、いやいやどうしてまだまだこんな信仰形態がのこていますよという話だ…

日脚伸ぶ

『あの世」と「この世」のあいだ』 谷川 ゆい著 副題に「たましいのふるさとを探して」とある。「懐かしくて安心できる」そんな安らぎの地を探して各地を訪ね歩いた話である。「安らぎの地」は時には「この世」と「あの世」が隣り合った地だといい、時には自…

大寒

『小岩へ』 島尾 伸三著 著者は島尾敏雄氏とミホさんの長男である。時には投げやりで自虐的とも思える文体からみると、よほどご本人には不本意な執筆らしい。書きたくもない両親のことを書けと言われれば、否が応でも幼年期の不安な気持ちを思い出さずにはい…

春隣

『水底の歌 下巻』 梅原 猛著 前回でも断ったように斜め読みで梅原さんには申し訳がないのだが、それでも実に面白かった。下巻で明らかにされたことを整理すると 1, 正史(続日本紀)に「従四位下柿本佐留卒す」と記載される人物と柿本人麻呂は同じ人物と…

初場所

『水底の歌 上巻』 梅原 猛著 12日、梅原さんが亡くなった。私は哲学者としての梅原さんはよく知らないが、古代学への発言は面白くてその著書も随分興味深く読ませていただいた。『隠された十字架』の聖徳太子鎮魂説や出雲に関する『葬られた王朝』論は文…

山眠る

『雪の階』 奥泉 光著 惹句にミステリーロマンとある。日中戦争開戦前夜を背景に、華族という特権階級に属する女性を主人公にした話である。時代がかった装飾過剰とも思える文体が昭和十年という雰囲気をよくだして歴史ロマンミステリーにふさわしい。「天皇…

寒さ

『句集 源義の日』 角川 春樹著 父恋母恋姉恋友恋の句集である。おそらく半分以上が身近な亡き人を忍ぶ句なっている。表題からして父角川源義氏の忌日を意識してのことであり当然と言えばそうである。 角川春樹氏と言えば山本健吉氏が『現代俳句』で言葉を極…

鴨の陣

『佐野洋子の「なに食ってんだ」』 佐野洋子 オフィスジロチョー編 佐野さんが亡くなってもう九年もたつのだから今さら新刊本は出ないと思うわけだ。ところがである。もちろんこの本は佐野さんの著作のあちこちからの抜き出しだが、懐かしい佐野さんの語り口…

寒の水

昨日はこの冬一番の寒さで日中の気温も四度しか上がらなかった。名古屋市では最高気温が札幌市をしたまわったということでニュースになっていたほどだ。インフルエンザも流行っているというからなるべく出かけたくないのだが医者と図書館と買い物に出かける…

裸木

寒気が下りてきて日差しはあるが風が冷たい。午前中はこの冬二回目のマーマレイド作りをする。 午後は日差しの暖かい縁側でまず講談を聞く。何でも神田松之丞という講談師が人気だというのだ。演目は忠臣蔵から「赤垣源蔵 徳利の別れ」。概ね知っている話で…

初湯

『邪馬台国は「朱の王国」だった』 蒲池 明弘著 「朱」とは硫化水銀を主成分とする赤色系の顔料である。火山活動に伴う産物として得られるので火山国の日本ではかっては多くの鉱床があったらしい。「丹生」という地名が各地に見られることや古墳の内部に大量…

五日

新聞のおくやみ欄で昔の知り合いの逝去を知る。民生委員を務めていた頃の先輩委員で五年ほど前までは年賀状のやり取りもしていた。同じ頃の先輩委員に電話をしたら、今日がお葬式で彼女は参列すると言われる。その言葉に迷ったがご無礼することに。せめて亡…

年酒

『誕生日の子どもたち』 トルーマン・カポーティ著 村上 春樹訳 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 毎年のことだが三が日もあっという間に過ぎる。迎春準備し、来客を迎え、以前のように身体が動いたことに感謝せねばと思うよう…

年の暮

ついに雪が降った。初雪は昨日未明らしいが、ほんのちらついた程度であり実質的には今日が初雪だ。報道では岐阜市は7センチと言ってたが、我が家では5センチぐらいかしらん。 昨日本家から正月用の花を貰ったので花を活け墓参りもしようと思っていたのだが…

数え日

『冬の鷹』 吉村 昭著 関川夏央さんの『昭和時代回想』を拾い読みしていたら「評伝もまた小説たらざるを得ない」という小節で、この本が紹介されていた。「小説と銘打ってはいるが、これほど事実に執着する姿勢をみせた作品はまれだ」というくだりでである。…

柚子湯

帯状疱疹の神経痛が長引いて頻繁に医者通いで気が滅入る。昨日も病院の会計窓口に並んでいたら(昨日は放射線科の先生の診察)列の後ろで爺さんたちが大声で放談するのが聞こえた。久しぶりに病院に来たら人が多いのに驚いたという話から始まって、老人が長…

しぐれ

『山の神』 吉野 裕子著 興味深い話であったがなかなか難しい本でもあった。 「蛇と猪、なぜ山の神はふたつの異なる神格を持つのか」うっかりしていたがヤマトタケルノミコトを死に至らしめた伊吹山の神は、古事記では「白猪」であり日本書紀では「大蛇 オロ…

日短

『それゆけ、ジーヴス』 P・G・ウッドハウス著 森村たまき訳 皇后さまがお誕生日会見で触れられていたので、興味を覚えて借りてきた。まだ読了してはいないが読み通せるか自信がない。つまり内容はユーモア小説ともいうようなもので、あまり趣味ではないから…

聖樹

『83 1/4歳の素晴らしき日々』 ヘンドリック・フルーン著 ヘンドリックの残りの一年間を追体験した。オマニドクラブを立ち上げたヘンドリックたちは半月に一度のエクスカーションを企画し、映画会や動物園訪問・料理や絵画のワークショップなど楽しい時間…

賀状書く

押し迫らないうちにできることからやろうと賀状を書く。毎年は「筆ぐるめ」で作っていたが今さら古いパソコンを起動するのも面倒だと思っていたらTが郵政省の「年賀状キッド」を入れてくれた。去年はうまくいかなくて結局あきらめたのだが、今年はなんとか印…

寒波来る

83 1/4歳の素晴らしき日々 ヘンドリック・フルーン著 長山さき訳 帯状疱疹で額から瞼が腫れ上がりまるでお岩さん。片目が十分機能しなくて不便極まりない。それよりも痛みが酷いので「老人には強すぎるが」と、もう少し強い痛み止めを出してもらう。ところ…

銀杏散る

二・三日前から右のこめかみ付近が痛くて片頭痛かなあと痛み止めを飲んでいた。いっこうに改善せずにさらに頭皮の一部にピリピリした痛みが出てきて「帯状疱疹」かもしれないと思い至った。昨日受診して一晩様子をみて結局「帯状疱疹」との診断である。発疹…

冬銀河

昨日今日と夫は訃報が入って慌ただしい。我が家には昔から(多分江戸時代ころから)冠婚葬祭を助け合ってきた一族があり、今回はその関係である。一族といっても少し昔までは八軒だったのが今は五軒に減り、日頃の付き合いがあまりあるわけでもなく、葬儀も…