春風

 檜の剪定が終わった。いろいろためらったがやってもらってよかったと思う。これで大風などに枝が揺すられて、倒木などという可能性は低くなったのではないか。案の定カア公が営巣をしていたとかで、庭師さんが上っている間は遠くからカアカアと怒っていたらしい。もちろん巣の枝は残してあるとのこと。若いが感じのよい庭師さんで、それも気持ちがよかった。高校の園芸科を出たと言われていたが今時の若い職人さんにもこういう人もいるのかと考えを改めた次第。

 

 昨日からスパムコメントがいくつもきて閉口する。Tのところにも来てるというが、これ以上増えるのなら対策をしなくてはと思う。

 

 

 

 

     剪定のすみたる枝を春の風

 

 

 

 

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春眠し

『ファミリー・ライフ』      アキール・シャルマ著 小野正嗣

 新聞の書評欄で蜂飼耳さんが推奨されていたので、早速読む。辛い悲しい話だが救いもある話だ。著者はアメリカ在住のインド人で、この話はほとんど著者の体験に基づいた自伝的話だという。 

 主人公アジェ一家は彼がまだ小学生のうちに一家をあげてアメリカにに移住する。家族の夢は優秀な兄が医師にでもなって、かの地で成功を収めることにあるのだが、期待の兄が事故にあってしまった。寝たきりになった兄をめぐって母は必死に介護に明け暮れ、父は絶望のあまりアルコールに逃げようとする。不安定な暮らしの中で時には罵り合い時にはいたわり合い、祈りながら忍耐強く続けられていく家族、そして成長していく少年。

 

 人の一生が思いもよらぬ出来事で曲げさせられたり中断させられたりというのは決して珍しいことではあるまい。いくつかの事例のひとつであっても当事者にとっては受け入れがたい理不尽な話だ。そうした話のひとつとして、長い苦しみと祈りの果てにたどりついった平安と光に読者もまた安堵をする。

 

 

 

 

     長鳴りの電話はるかに春眠し

 

 

 

 

ファミリー・ライフ (新潮クレスト・ブックス)

ファミリー・ライフ (新潮クレスト・ブックス)

 

 築九十年にもなろうという我が家の檜。かっては「防風林」として植えられたのだろうが、長年放りっぱなしで枝は伸び放題、鳥達にとっては楽園だったようだが家を傷める心配などもあり剪定をしてもらうことにした。やっとちょうどよい業者さんにであったこともある。今日からその作業が始まったがどんなふうになるか。

 

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連翹

『入門俳句の表現』   藤田 湘子著

 藤田湘子の俳句も好きだが、作句指導書も好きだ。この本は「俳句研究」の読書俳句欄での選評をまとめたもので、一般投句のうちから選んだたくさんの秀句が引用されて、とても勉強になり、再読である。

 

 (名句は)すべて「朗誦するにふさわしいリズム」によって成立しているし、そのリズムは大方「切れ」や「切字」の効果から生じたものであり、それはまたみごとな省略によって可能になった。

 

 こうした考えに基づき「切れ」「リズム」「省略」の大切さを繰り返し説いている。

 この他「古い情趣は捨てよ」とか「ユーモアを持て」とか「詩心が大事」とか作句に向かう心構えを説く項もあれば、「動詞はつつしめ」とか「『で』は使うな」「擬人法は要注意」と具体的な技法にふれた項もある。

 ときどきは納得して読んだのだがなかなか身につかぬのが凡人。いつもいいかげんなものを出していて恥ずかしいかぎりだ。

 それにしても最近は湘子さんのようなきちんとした指南書を出す人が少なくなったなと思う。

 

 

 

     連翹や垣を隔てて農学部

 

 

 

 

 

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入門  俳句の表現 (角川選書)

入門 俳句の表現 (角川選書)

犬ふぐり

火山列島の思想』     益田 勝実著

 東北大震災から七年である。早起きをして何ということもなくネットを見る。YouTubeで震災前に旅行で行った小泉海岸(2016・3・11参照)の津波の映像を見る。津波の映像はなんど見ても恐ろしい。美しかった松林や家々がみるみるなぎ倒されていく。その後、この海岸に巨大防潮堤を造るという話も見る。高地集団移転後の海岸に巾90メートル高さ14.7メートルの海も見えなくする巨大防潮堤を造るらしい。これを批判する映像なのだが2014年のものであり、今はどうなったのか。検索してもわからない。

 先に読んだ対談集で玄侑さんが『火山列島の思想』に触れておられたのでTの本棚から借りてくる。この本で筆者は「日本的固有神」として「オオナモチ」の神を挙げておられる。「オオナモチ」は大黒さま、大國主である。史書に書かれた「オオナモチ」の火山神的な要素を挙げて「ナ」とは「穴」であり大きな火口を意味する神の名で、火山の神マグマの神が日本的固有神ではないかといわれるのだ。

 では、出雲でのオオクニヌシはどう考えるのか。これについても「出雲国造神賀詞」を引いて

    昼は五月蝿(さばへ)なす水沸き、夜は火甕(ほべ)なす 光く神あり

とやはり火山神的な神であったことを指摘されている。決して「良縁の神」というわけではないのである。

 最近放映されているNHKの「ジオ・ジャパン」でもこの列島がいかに大きな地殻変動の果ての今日であるか、まざまざと教えてくれるし、まさに今新燃岳は激しい火を吐き続けている。この国が常に予測不可能な自然現象にさらされずにはおられないという宿命が「オオナモチ」を畏れ祀ったということであろうか。今も昔もこの国は「無常の国」であるとつくづく思う。

 

 

 

 

    瓦礫みな人間のもの犬ふぐり   高野 ムツオ

 

 

 

 

 今年もまた高野さんの俳句を引かせていただいた。当事者に優るものはないと思うので。

 

益田勝実の仕事〈2〉火山列島の思想・歌語りの世界・夢の浮橋再説 ほか (ちくま学芸文庫)

益田勝実の仕事〈2〉火山列島の思想・歌語りの世界・夢の浮橋再説 ほか (ちくま学芸文庫)

 

 

 

春の潮

雨が上がりて一転、風が冷たい。だが春の足取りは着実だ。

さて、今日は無駄使いをしたという話。メールの受信欄にオンラインショップからの案内がきていた。登録更新の案内である。たまに買い物をする好きなお店だ。更新をしておこうかと思って再登録をしたら2000円のクーポン券がついてきた。このクーポン券に煩悩が刺激され、商品を見てしまう。春向きのカーデガンが気に入る。

 買おうかな、どうしょうかな、断捨離に逆行するな、この前一枚捨てたからいいか、気分転換も必要。

 だんだん買うことに自分を説得する。というわけで「買い物カゴに入れる」をクリックした。いくつになっても欲望は捨て切れません。

 

 

 

 

     日向路を南下ますます春の潮

 

 

 

 

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おぼろ

『中途半端もありがたい  玄侑宗久対談集』

 対談集というのはやや苦手である。対談する二人の会話のテンポや水準についていけず、読んだという充足感がもてないことが多い。今回もそれは同様で、わからないところはわからないままに読んだというところである。

 玄侑さんと十人の方の対談集である。対談途中に震災があったようで半分は震災前の、半分は震災後のものである。当然ながら話題もがらりと変わる。

 震災後の対談相手は山田太一さん、中沢さん、佐藤優さん、日野原さん、山折哲雄さんで「これからどうあるべきか」という話になる。

 豊かさの水準がすぎている。 足るを知る暮らし。

 巨大システムに頼らない。 自然と戦わず共生する。 

 自然エネルギーをメガで考える危うさ。

 差別される沖縄と福島。 信用できない政府。 分割された自治。 小さな自主組織。

 無常を知り適応して生きる。 頑張りすぎず、ぐずぐずと生きる。

 あれから七年。あれほどの災害を越えて日本は何か変わったであろうか。もちろん私自身への問いかけでもある。

 

 

 

 

     追憶のくり返されておぼろかな

 

 

 

 

中途半端もありがたい:玄侑宗久対談集

中途半端もありがたい:玄侑宗久対談集

三月

金婚式

 実は今週は結婚五十週記念(金婚式)を迎える。金婚式を迎えられる夫婦がどれほどの割合なのかは知らないが、かって民生委員をしていた時に金婚式のお祝いを届けたりしたのはそんなに多くはなかったように思う。五十年の間には四年ばかりの単身赴任期間はあったが、あとはずっと一緒、よくもまあ飽きずに過ごしてきたものだと感慨深い。

 夫とは同じ大学の同じサークルでの出会いで、いろいろあって卒業前に一緒になってしまった。経済力もないのにと叱られ、散々頭を下げて大変なスタートであった。一緒になってからも大人になれない人間同士で喧嘩もよくしたが結果的には半世紀持ったということになる。六十周年はダイヤモンド婚というからまずは二人とも元気でそれを目指したい。

 

 

 

 

     三月の花嫁卒業を待たず

 

 

 

 

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 私のために買ってきてくれたというわけではないが、「花を買ってきたぞ」といえば喜ぶことにしている。トシヨリ夫婦には思いやりが一番ですものね。